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ペグマタイト(pegmatite)

ペグマタイト(pegmatite)は鉱物結晶が特に大粒(数cm~数十cm以上)になった火成岩の総称である。 大半のペグマタイトは花崗岩質であり、単にペグマタイトといったら花崗岩質のものを指すことが普通だが、閃緑岩質斑れい岩質閃長岩質など様々な成分のペグマタイトが存在する。 片麻岩などの珪長質の変成岩中には"変成ペグマタイト"が存在することがあり、このようなペグマタイトは火成岩ではなく変成岩に分類されることになる。
花崗岩質ペグマタイトは特に巨晶花崗岩(きょしょうかこうがん, megacrystic granite)と呼ばれることもある。 日本の石材業界の用語では、花崗岩が御影石と呼ばれることから、鬼御影(おにみかげ)と呼ばれる。 ペグマタイトは通常の鉱物粒子サイズの火成岩や変成岩の中に、脈状、レンズ状、塊状などの形態で産することが多い。 ペグマタイトは鉱業資源的に重要である。リチウム、ベリリウム、ニオブ、タンタルやその他希元素の鉱床の母体になるほか、晶洞には水晶、ざくろ石(ガーネット)ベリル(アクアマリン)トパーズリチア電気石(トルマリン)などの宝石鉱物がしばしば産する。
中の人より: このページの記述は割と間違ってるので、近々大規模に書き直したいと思っています。あしからずご了承ください。改訂までしばしお待ち下さい。
花崗岩質ペグマタイト_巨晶花崗岩_Pegmatite
花崗岩質ペグマタイト(ジンバブエ シュルグイ, Shurugwi, Zimbabwe)

ペグマタイトの産状と成因

ペグマタイトの成因は、水に不飽和なメルトがリキダス以上の温度からソリダス以下の数百℃程度の温度まで急冷、その温度をしばらく保持され、種結晶形成が抑制されて少数の結晶が巨大に成長したことに依る、とされている。このようなペグマタイト形成モデルにいたるまでに、ペグマタイトの定義や成因は長い間、議論が続き混乱していたが、最終的に観察事実と珪長質メルトの高温高圧合成実験の結果からおおよそ決着した。

ペグマタイトを定義付け、他の岩石と区別し、なおかつ成因を考察し上記のような伝統的なペグマタイト成因に関するアイデアを否定するために重要な、ペグマタイトにおける観察事実を以下に列挙する。

・ペグマタイトの石英や長石は、文章花崗岩のようにエピタキシャル成長したものが特徴的に見られる。
・ペグマタイト脈では壁岩から中心に向かって結晶成長が起きている。
・ペグマタイト脈の壁岩から成長した結晶は壁岩の鉱物結晶と同じ方位を持つことがしばしばある。
・ペグマタイト脈では壁岩から中心に向かって鉱物種が減少する。たとえば、壁側では石英、長石、黒雲母と3種であるのに対して、少し内側では石英と長石のみ、最終的に中心部では石英のみになることが多い。
・ペグマタイトは深成岩バソリスの周縁部や貫入による接触変成を受けた周囲の変成岩の中に見られる。
・ペグマタイト近傍または脈同士が密接に関連する形で、アプライトに代表されるような細粒の岩石脈も見られる。
燐灰石蛍石トパーズ電気石緑簾石緑泥石白雲母、粘土鉱物、沸石などのリン、フッ素、ホウ素、水など揮発成分に富んだ鉱物はペグマタイト脈の中心部で特に多く見られ、熱水の影響はペグマタイト中心部から縁辺部や外部に向かって放出される形で観察される。

第1のエピタキシャル成長した石英と長石の存在はペグマタイトを特徴づけるもっとも重要な要素の1つである。単に巨大な結晶が成長しているだけでは、変成岩中のポーフィロクラストや熱水脈との区別ができないが、文象花崗岩のようなエピタキシャル成長した構造を持つ岩石はペグマタイトしか存在しない。黒曜石を完全溶融させた後に冷却する実験では、このようなエピタキシャル成長の構造を作るためには、水に不飽和な粘性の高いメルトがソリダス以下の数百度の温度まで一気に急冷した後に温度をしばらく保持することによってのみ再現できることが確認されている。

ソリダス以下まで急冷されることによって種結晶の形成が抑えられることは、ペグマタイトが巨晶となる最も根本的な理由であると考えられる。 徐冷されるとソリダスとリキダスの間の温度では過剰な自由エネルギーが種結晶形成によって解消され、その後に個々の結晶が成長する。しかし、メルトがソリダス以下まで過冷却された場合には、種結晶の新規形成は自由エネルギー的に有利にならないため、既存の結晶の再成長などによって過剰な自由エネルギーの解消する必要が生じる。壁岩からの中心に向けて結晶成長が起きていること、外縁部から中心部に向かって鉱物種の減少が見られること、さらにバソリス外縁部や外周部にペグマタイトが多いこと、などの観察事実からも、このような過冷却過程は支持される。アプライトのような細粒岩石はペグマタイトほど過冷却に至らずにソリダスとリキダスの間の温度で多数の種結晶が発生したために個々の結晶サイズが小さくなったと考えられる。

花崗閃緑岩中のペグマタイト岩脈(宮城県金華山)  花崗閃緑岩中のペグマタイト岩脈(宮城県金華山)
花崗閃緑岩中のペグマタイト岩脈(宮城県金華山)

ペグマタイトの中心部に空洞が生じて自形結晶が成長していることがあり、そのようなものはペグマタイト晶洞と呼ばれる。 なお、ペグマタイト晶洞と同じ構成の鉱物からなる晶洞が花崗岩類など深成岩の空隙中に、晶洞ではない巨晶岩石部分を欠いて生じていることがあり、 そういうものはミアロリティック・キャビティ(miarolitic cavity)と呼んで区別されることがある。


カリ長石(青色のアマゾナイト)と石英(黒色の煙水晶)からなるペグマタイト晶洞の例。アメリカ合衆国コロラド州


ミアロリティック・キャビティ(miarolitic cavity)。岐阜県苗木地方蛭川村田原。

ペグマタイトを構成する鉱物

ペグマタイトを構成する鉱物は、母体となる岩石の組成によって異なる。

花崗岩質ペグマタイトの主要な構成鉱物は石英カリ長石曹長石そして白雲母黒雲母である。 花崗岩質ペグマタイトで見られる鉱物としてこの他に、 燐灰石鉄電気石などの造岩鉱物に加えて、褐簾石ジルコンモナズ石ゼノタイムガドリン石コルンブ石タンタル石フェルグソン石閃ウラン鉱燐灰ウラン石、、燐銅ウラン石トール石などの希元素に富んだ鉱物、 磁鉄鉱錫石輝水鉛鉱、マンガン重石などの金属鉱物、 鉄礬柘榴石満礬柘榴石緑柱石、フェナス石、トパーズなどの宝石鉱物が挙げられる。 末期生成物や二次的な変質物として束沸石などの沸石類やオパール(玉滴石)、緑泥石や粘土鉱物類などの低温の熱水から生じる鉱物が見られることも多い。

閃緑岩質ペグマタイトの構成鉱物も花崗岩質ペグマタイトと同様に石英カリ長石を主体とし、その他にも同じような鉱物を産するが、緑簾石チタン石などやや鉄やカルシウムに富んだ鉱物が多く見られる傾向がある。

斑糲岩質ペグマタイトには石英カリ長石はほとんど無く、普通角閃石斜長石が最も多く見られる。その他、灰長石チタン石ジルコンなどの鉱物が見られる。

閃長岩質ペグマタイトは、主にカリ長石、曹長石、エジリン輝石、準長石類(霞石、白榴石、方ソーダ石)、蛍石などの鉱物からなる。 閃長岩にはシリカに乏しいため石英はあまり含まれないが、ペグマタイトへ分化する過程でシリカに富むようになって石英を晶出することもある。

花崗岩質の中でもリチウムに富んだペグマタイトでは、石英・などに伴ってリチア雲母リチア電気石リチア輝石、アンブリゴ石などのリチウムを含んだ鉱物が見られる。
リンに富んだペグマタイトでは、石英カリ長石などに伴って燐灰石、藍鉄鉱、燐灰ウラン石などのリン酸塩鉱物を多く含む。

産業利用

有用元素の鉱石または宝石鉱物に富んだペグマタイトを、特にペグマタイト鉱床(pegmatite deposit)と呼ぶ。 ペグマタイト鉱床を対象とした鉱業には、様々な鉱石を採掘する鉱山がある。

関連項目

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