ペグマタイト(pegmatite)

ペグマタイト(pegmatite)は鉱物結晶が特に大粒(数cm~数十cm以上)になった火成岩の総称である。 大半のものは花崗岩質であり、単にペグマタイトといったら花崗岩質のものを指すことが普通だが、閃緑岩質斑れい岩質など様々な成分のペグマタイトが存在する。 片麻岩などの珪長質の変成岩中には"変成ペグマタイト"が存在することがあり、このようなペグマタイトは火成岩ではなく変成岩に分類されることになる。
花崗岩質ペグマタイトは特に巨晶花崗岩(きょしょうかこうがん, megacrystic granite)と呼ばれることもある。 日本の石材業界の用語では、花崗岩が御影石と呼ばれることから、鬼御影(おにみかげ)と呼ばれる。 ペグマタイトは通常のサイズの火成岩や変成岩の中に、脈状、レンズ状、塊状などの形態で産することが多い。 ペグマタイトは鉱業資源的に重要である。リチウム、ベリリウム、その他希元素の鉱床の母体になるほか、晶洞には水晶、ざくろ石(ガーネット)ベリル(アクアマリン)トパーズリチア電気石(トルマリン)などの宝石鉱物がしばしば産する。

ペグマタイトの産状

ペグマタイトという岩石名に厳密な定義はなく、「火成岩や変成岩の中に見られる、数cmを超える大きな結晶からなる等粒状組織を持つ部分」をペグマタイトと呼ぶことが通常である。 ペグマタイトを構成する鉱物は周囲の火成岩や変成岩とおおよそ同じであるが、カリウムや希元素などの非適合元素、また水やフッ素などの揮発性成分に富む傾向が見られる。 ペグマタイトの一般的な構成鉱物は、石英とカリ長石、そして白雲母黒雲母が挙げられるが、組成によって多種多様な鉱物からなるペグマタイトが存在する。(詳細な構成鉱物は後述。)

ペグマタイトは成因によって「火成起源ペグマタイト」「変成起源ペグマタイト」の2つに大きく分けられる。
火成起源ペグマタイトは、一般にマグマ固結過程の末期に形成する。 マグマとその周囲の岩体の温度差は貫入からの時間が経つとともに徐々に小さくなり、マグマの冷却速度が低下する。また、マグマに含まれていた水などの揮発性成分が鉱物に取り込まれずに濃集していく。そのため、マグマ固化の末期には通常の深成岩よりもさらに大きな鉱物結晶に成長しやすくなり、ペグマタイトが形成される。 ペグマタイトの組成によって、「花崗岩質ペグマタイト」「閃緑岩質ペグマタイト」「斑糲岩質ペグマタイト」などと母体となる深成岩と対応付けて呼ばれ、それぞれの構成鉱物は異なる。
一方で、片麻岩など地殻中部~下部で形成される変成岩の中には、"変成ペグマタイト"が脈状あるいはレンズ状に存在する事がある。 変成ペグマタイトは、変成作用や変形作用によって移動する水などの流体が特定の場所に集積して形成されたもので、岩石が溶融することなく生じたものであるから、火成岩ではなく変成岩に分類されることになる。ただし、マグマ固結過程の末期に深成岩体周囲の変成岩の中へ脈状につながった火成起源ペグマタイトが形成されることや、火成起源ペグマタイトを含んだ深成岩体が変成作用・変形作用を受けることなども普通に起きるため、単に変成岩中にペグマタイトが存在しても溶融せずに形成された変成ペグマタイトであるとは断言できない。

マグマが固結する際にはマグマ内の晶出しやすい成分(適合元素)が鉱物へ取り込まれ、そうではない元素(不適合元素)が選択的にマグマへ取り残されていくため、マグマ自体の組成が変化していく(結晶分化作用)。
さらに、マグマ中に含まれている水を中心としたの揮発性成分は鉱物結晶中にはほとんど取り込まれないため、マグマ固結の後半になるに連れて揮発性成分の濃度が高まっていく。
従って、ペグマタイトには母体となった深成岩よりも揮発性成分や不適合元素に富んだ鉱物の存在度が多くなることが多い。

ペグマタイトはレンズ状または岩脈状に産する。岩脈状のペグマタイトは、母体となる深成岩の中に形成する場合と、その深成岩から外側の岩石(接触変成作用を受けてホルンフェルスなどとなっている)中に生じる場合とがある。 ペグマタイトを構成する鉱物は、レンズであっても岩脈であっても、多くの場合、壁面と直行する方向に鉱物の結晶が成長しており、それらのサイズは壁面から遠ざかるほど徐々に大きくなる傾向が見られる。
ペグマタイトのレンズまたは岩脈はおおよそ数十メートルから数百メートルのスケールで生じる。

花崗閃緑岩中のペグマタイト岩脈(宮城県金華山)  花崗閃緑岩中のペグマタイト岩脈(宮城県金華山)
花崗閃緑岩中のペグマタイト岩脈(宮城県金華山)

ペグマタイトの中心部に空洞が生じて自形結晶が成長していることがあり、そのようなものはペグマタイト晶洞と呼ばれる。 なお、ペグマタイト晶洞と同じ構成の鉱物からなる晶洞が花崗岩類など深成岩の空隙中に、晶洞ではない巨晶岩石部分を欠いて生じていることがあり、 そういうものはミアロリティック・キャビティ(miarolitic cavity)と呼んで区別されることがある。


カリ長石(青色のアマゾナイト)と石英(黒色の煙水晶)からなるペグマタイト晶洞の例。アメリカ合衆国コロラド州


ミアロリティック・キャビティ(miarolitic cavity)。岐阜県苗木地方蛭川村田原。

ペグマタイトを構成する鉱物

ペグマタイトを構成する鉱物は、母体となる岩石の組成によって異なる。

花崗岩質ペグマタイトの主要な構成鉱物は石英カリ長石曹長石そして白雲母黒雲母である。 花崗岩質ペグマタイトで見られる鉱物としてこの他に、 燐灰石鉄電気石などの造岩鉱物に加えて、褐簾石ジルコンモナズ石ゼノタイムガドリン石コルンブ石タンタル石フェルグソン石閃ウラン鉱燐灰ウラン石、、燐銅ウラン石トール石などの希元素に富んだ鉱物、 磁鉄鉱錫石輝水鉛鉱、マンガン重石などの金属鉱物、 鉄礬柘榴石満礬柘榴石緑柱石、フェナス石、トパーズなどの宝石鉱物が挙げられる。 末期生成物や二次的な変質物として束沸石などの沸石類やオパール(玉滴石)、緑泥石や粘土鉱物類などの低温の熱水から生じる鉱物が見られることも多い。

閃緑岩質ペグマタイトの構成鉱物も花崗岩質ペグマタイトと同様に石英カリ長石を主体とし、その他にも同じような鉱物を産するが、緑簾石チタン石などやや鉄やカルシウムに富んだ鉱物が多く見られる傾向がある。

斑糲岩質ペグマタイトには石英カリ長石はほとんど無く、普通角閃石が最も多く見られる。その他、灰長石チタン石ジルコンなどの鉱物が見られる。

閃長岩質ペグマタイトは、主にカリ長石、曹長石、エジリン輝石、準長石類(霞石、白榴石、方ソーダ石)、蛍石などの鉱物からなる。 閃長岩にはシリカに乏しいため石英はあまり含まれないが、ペグマタイトへ分化する過程でシリカに富むようになって石英を晶出することもある。

花崗岩質の中でもリチウムに富んだペグマタイトでは、石英・などに伴ってリチア雲母リチア電気石リチア輝石、アンブリゴ石などのリチウムを含んだ鉱物が見られる。
リンに富んだペグマタイトでは、石英カリ長石などに伴って燐灰石、藍鉄鉱、燐灰ウラン石などのリン酸塩鉱物を多く含む。

変成ペグマタイトでは、準片麻岩など堆積岩起源の変成岩の中に生じたものはそれらの組成の影響を受けて、通常のペグマタイトよりもさらにアルミニウムに富んだ鉱物(紅柱石、コランダムなど)をよく含む傾向がある。

産業利用

有用元素の鉱石または宝石鉱物に富んだペグマタイトを、特にペグマタイト鉱床(pegmatite deposit)と呼ぶ。 ペグマタイト鉱床を対象とした鉱業には、様々な鉱石を採掘する鉱山がある。

関連項目

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