白雲母 muscovite
色は無色~黄色味を帯びた灰色が一般的だが、不純物によって褐色、緑色、淡赤色などの色を帯びることもある。強い真珠光沢を持ち、数ミリメートル以上の粒子はキラキラと輝くため岩石中に含まれているとよく目立つ。
白雲母は他の雲母と同様にへき開が著しく、とても薄く剥がれる。花崗岩類やペグマタイトのような火成岩、グライゼンのように熱水変質を受けた岩石、あるいは砂岩や泥岩を源岩とする変成岩などに広く見られる鉱物。
- 白雲母の概要
- 白雲母の産出
- 白雲母の産業的利用
- 関連項目
白雲母の概要
白雲母は厳密には単斜晶系のもの3種類と三方晶系のものとがあり、それぞれが多形の独立の鉱物種として扱われる。しかしこれらは、X線回折を行わない特別できないため、通常は区別せずに白雲母とまとめて称される。通常見られる白雲母の多くは単斜晶系である。
KAl2[(OH, F)2|AlSi3O10]という組成のうち、KがNaに置き換わるとソーダ雲母、Cs(セシウム)に置き換わるとナンピン雲母、またNH4+(アンモニウムイオン)に置き換わると砥部雲母であり、それぞれとの間に固溶体が存在するが、組成は完全には連続していない。
カッコの外のAlの一部をK(Mg, Fe)に置き換え、さらにカッコ内のAlの一部を(OH)Siに置き換えたものはフェンジャイト(phengite)と呼ばれ結晶片岩の中によく産出するが、見た目に白雲母との違いはほとんどないため区別することは極めて難しい。
Alの一部をCr(クロム)で置き換えたものは鮮やかな緑色を帯びることがあり、クロム白雲母(fuchsite, フクサイト)と呼ばれることがあるが、フィールド名であり独立した鉱物種名ではない。。
熱水変質によってできた岩石や、結晶片岩などの変成岩には微細な結晶の白雲母が多量に含まれスベスベとした触感を持つものがあり、そういったものを絹雲母(キヌウンモ, sericite, セリサイト)と呼ぶことがあるが、これもフィールド名である。
白雲母の産出
白雲母はカリウムとアルミニウムを多く含む鉱物であり、火成岩では、分化の進んだ花崗岩やペグマタイト、アプライトなどの中に生じる。 特に、ペグマタイトには一般的に多量の白雲母が見られ、空隙部分には六角板状などの自形結晶が成長し、数十cmよりも大きな大型の結晶になることもある。
砂岩や泥岩など粘土鉱物を含む堆積岩が変成作用を受けて再結晶が進むと、白雲母を含んだ千枚岩、結晶片岩、片麻岩、クォーツァイトなどの変成岩が生じる。 白雲母を少量しか含んでいなくても光沢が強いため、数ミリメートル以上の粒子であればよく目立つ。そのため岩石中の実際の白雲母の含有量よりも肉眼的には多量に入っているように見えることもしばしばある。
クロム白雲母(フクサイト)はクロムの供給源となるかんらん岩や蛇紋岩などの超苦鉄質岩、あるいはクロム鉄鉱の存在に伴って生じる。
かんらん岩や蛇紋岩などの超苦鉄質岩の中あるいは近傍に生じた熱水鉱床、かんらん岩や蛇紋岩と砂岩や泥岩が一緒に変成作用を受けた際のそれらの岩石の境界領域などによくクロム白雲母が見られる。
また、太古代や原生代初期の砂質・泥質変成岩やクォーツァイトにはコマチアイトなどに由来するクロム鉄鉱微粒子がよく含まれているため白雲母がクロム白雲母となっていることが多い。
白雲母の産業的利用
かつてはペグマタイト鉱床で産出する大型の白雲母を、窓ガラスの代用品、コンデンサーの材料などに用いたが、現在ではほとんどが合成品を用いている。
熱水変質した岩石の中のセリサイトは、現在でも化粧品や化学材料などの製品に利用したり、さらに合成品の材料にも用いたりするために採掘されている。
緑色の鮮やかなクロム白雲母を含み、さらに変成により石英の再結晶が進んで透明度やが高まったクォーツァイトはアベンチュリンとして宝飾品に利用される。