砂岩 sandstone

砂岩(さがん、sandstone、サンドストーン)とは、砂と呼ばれる粒径が2~1/16 mm(62.5 μm)の砕屑物を主な構成物として固まった堆積岩である。 堆積岩のうち最も一般的な種類の1つ。 砂岩は、粒径、粒子の円磨度、構成鉱物の種類や量比などによって、さらに細く分類される。 多くの砂岩の構成鉱物は、主に石英長石である。
砂岩(さがん、sandstone、サンドストーン)千葉県南房総市荒川の砂岩
砂岩(千葉県南房総市荒川)

砂岩の概要と成因

砂岩を始めとする砕屑岩は、主として流水の働きによる侵食・運搬・堆積を経て形成される。 大陸地殻は主に花崗岩類(広義の花崗岩)からなるので、それらが砕かれてできる砕屑物もおおよそ花崗岩と同じ構成鉱物になる。
しかし、花崗岩類を構成する主要鉱物である石英長石の間には風化への耐久性の違いがあり、長石のほうが化学的に不安定で分解して粘土鉱物類になりやすい。 そのため、風化・侵食・運搬の過程を経る中で、砂のように粗粒な砕屑物には石英など風化に対して耐久のある鉱物が、 泥のように細粒の堆積物には粘土鉱物が、それぞれ濃集する。 したがって、風化・侵食・運搬の過程を経るにつれて砕屑岩の全岩組成は、砂岩はSiO2に富み、泥岩はAl2O3やK2Oに富むようになる。 このように、砕屑物の形成から堆積までの間に鉱物が分化していく過程を砕屑物の熟成という。 熟成度の低い堆積岩は砕かれる前のもとの岩石(大陸地殻の場合大抵は花崗岩類)の組成に近く、熟成度の高くなるにつれて上記のように組成が変化していく。

また、熟成度によって砂の粒子の形状にも違いが現れる。 熟成度の低い場合、砂は角ばった形をしている。熟成度が増すにつれて、角がとれて丸みを帯びた形に変化していく。
このような砕屑粒子の丸みの評価指標として、円磨度と球形度がある。 円磨度は角の取れている度合いのことで、3次元的に砕屑粒子の形を測定して厳密に定量することは難しいため、通常は円磨度印象図(例えばKlumbein, 1941)と比較して肉眼による半定量的な測定を行う。 球形度は粒子がどれくらい球形に近いかを表している。長径・中間径・短径などを測定することで、円磨度より定量的に丸みを評価できるが、測定するパラメータに限りがあることに注意が必要である。

砂や泥、レキのような堆積物を部屋の片隅でビンに保管しておいたとしても、何万年経っても砂岩や泥岩のような堆積岩にはならない。 堆積岩の形成には、地下に埋没してかかる圧力や温度と、それに伴って起こる堆積物の粒子間に存在する水などの流体と堆積物の化学反応が重要である。
堆積物が固まって堆積岩になる作用を続成作用(ぞくせいさよう、diagenesis、ダイアジェネシス)という。 続成作用には、物理的続成作用と化学的続成作用の2つがある。 物理的続成作用は、堆積物が圧力を受けて粒子間の隙間が詰まり、それに伴って粒子間に存在した水が抜ける圧密現象である。 化学的続成作用は、粒子間の水に溶け込んだ二酸化ケイ素や炭酸塩などが晶出することで、粒子間を結合させる作用である。 晶出する二酸化ケイ素や炭酸塩自体は、堆積物の一部が水に溶け込んだものである。 これら2つの続成作用はいずれも堆積した時から開始するが、初期はおもに物理的続成作用が支配的で、その後に時間をかけて化学的続成作用が進行する。 さらに温度や圧力が上がり化学的続成作用が進行していくと、変成岩を形成する変成作用と連続的に変化していき、両者の境界は曖昧である。

砂岩の分類

砂岩は構成する鉱物粒子のサイズと組成で分類される。 構成鉱物のうち、石英(Quartz)、長石(Feldspar)、岩片(Lithic fragment)を頂点にとった三角図(QFL図)を用いて分類するのが最も一般的である。 さらに粒子サイズ分布による分類をかけ合わせて、基質(30 μm=0.03 mm以下の粒子)の量が15%以下のものをアレナイト(arenite)、15~75%のものをワッケ(wacke、もしくはグレーワッケgreywacke or graywacke)と呼ぶ。 アレナイトとワッケの分類は基質の量によるため、その他の砂粒の大きさの大小は関係ない。 しかし多くの場合、アレナイトの砂粒はワッケよりも大きいことが多い。 基質が75%以上のものはシルト岩泥岩などの泥質岩に分類される。

砂岩の分類図 QFL図 アルコース・ワッケ

その他の砂岩の下位分類にアルコース(arkose)と呼ばれる物がある。アルコースは最低でも25%の長石と、ある程度の石英を含むアレナイトの慣用名である。 構成鉱物が花崗岩とほぼ同じであるため、しばしば風化した花崗岩との肉眼での識別が難しい。

オルソクォーツァイト(orthoquartzite)は、石英アレナイトの中でも特に熟成した砂岩のことである。 構成している石英粒子はほぼ完全な球形に近い。石英が90%以上を占め、その他はわずかな長石や粘土鉱物、さらに重鉱物としてジルコン、ルチル、磁鉄鉱、電気石、燐灰石などを伴うだけである。 広大な面積の大陸で長時間かけて石英以外の鉱物が淘汰され、さらに石英粒子もよく円磨されているために形成される。 砂漠・砂丘堆積物として特徴的であるほか、大河川の河口領域でも形成される。 日本列島のようなプレート沈み込み帯では、各々の河川の長さが比較的短く流域面積が小さいため、オルソクォーツァイトは形成されない。

砂岩の変成

砂岩の構成鉱物は大半が石英と長石なので、変成作用を受けても鉱物組合せの変化が少ない。 少量含まれる有色鉱物の変化が主体であり、変成度が上がるに連れて、緑泥石、黒雲母、ざくろ石などに変化する。
プレート沈み込み帯での低温高圧型や大陸衝突型の広域変成作用などの強い応力を受けて変成すると砂質片岩になることが多い。 一方で、高温低圧型の広域変成作用や接触変成帯などの比較的応力の弱い変成作用を受けると、ホルンフェルス準片麻岩になる。 また、ほとんどが石英からなるアレナイト(オルソクォーツァイトなど)が変成作用を受けた場合、石英粒子の再結晶以外に変化はほとんど起きない。 この場合、クォーツァイトと呼ばれる変成岩になり、チャートなどの珪質な堆積岩が変成を受けた場合と見た目が似た岩石になる。

産業利用

砂岩は粒子サイズが適度に大きく間隙が多数存在するため、石油の貯留岩として重要である。特に泥岩や頁岩のような有機物を多量に含み間隙の少ない岩石に挟まれて存在する砂岩は石油の貯留岩である可能性が高い。

堆積年代の若い砂岩は適度に柔らかく掘りやすいので、砕石に用いられることも多い。

砂岩の中でも、見た目の美しいものは建築物の外壁や床を装飾する石材として広く利用される。

関連項目

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