クォーツァイトquartziteという変成岩名は、起源の異なる岩石を呼び表すことのでその使用には注意が必要である。
クォーツァイトの源岩は主に、石英のみからなる砂岩(石英アレナイトなど)と、チャートとの2種類がある。
源岩がいずれであっても見た目はとても似ている。
これら2つを明確に区別するために、砂岩が変成したものを変砂岩metasandstone, チャートが変成したものをメタチャートmetachert(変チャート、変成チャートとも)と呼ぶことがある。
クォーツァイトの色は石英以外にどのような種類の鉱物を含むかによって大きく変わる。 石英以外にほとんど他の鉱物を含まない場合は白色や灰色のクォーツァイトになるが、赤色、褐色、黄色、緑色、黒色など様々なクォーツァイトがある。
クォーツァイトの破断面は粒度や結晶度によって変化する。 細粒のクォーツァイトではザラザラとした断面に細かな石英粒子が輝いているが、 再結晶度の高いクォーツァイトでは熱水脈で見られるような石英の塊となっている場合もある。
ほとんど石英の塊のような見た目になった変成度の高いクォーツァイト
32億年前バイトブリッジ層群、ジンバブエ/Beit Bridge Group, Limpopo belt, Zimbabwe
一方、石英アレナイトの中でも、特に粒が粗く、90%以上が球形に近い形に円磨された石英からなるをオルソクォーツァイト(正珪岩)と呼ぶ。 オルソクォーツァイトは、変成岩ではなく、堆積岩を指す用語である。 オルソクォーツァイトが変成を受けて再結晶が進み粒子境界の識別が難しくなった岩石は、クォーツァイトと呼ばれ変成岩として扱われる。
通常、クォーツァイトは特定の方向に割れやすい性質(片理)は持たないが、元の地層の層理面や構成鉱物の影響で片理を持つ場合、 珪質片岩(鉱物名で分類される場合は石英片岩)や千枚岩(特に珪質千枚岩)に分類される。
日本で見られるクォーツァイトの大半は変成したチャートである。 特に、花崗岩などの火成岩の貫入による接触変成作用によってチャートの石英粒子が再結晶してできたクォーツァイトが多い。
世界では石英質な砂岩を源岩とするクォーツァイトの方が量としては多い。 クォーツァイトになるような石英質な砂岩は広い露出面積を持つ大陸に限られるためである。 後述するアベンチュリンのような宝飾品に用いられるクォーツァイトの大半は大陸の石英質砂岩由来である。
緑色を帯びた灰白色のクォーツァイト(29億年前ポンゴラ層群、カープファール地塊、南アフリカ)
クォーツァイトは割れ口が鋭く尖ることが多いため、黒曜石等と同様に刃物として石器時代から利用されていたことが石器の記録から知られている。
石英の純度が高くその他の鉱物を含まないクォーツァイトは、ガラスの原料物質や珪素の鉱石として資源的に重要である。 珪素は半導体やセラミックス、樹脂などの原料として現代の工業文明には欠かせない。
クォーツァイトのうち脈などの少ない均質なものは、外壁や床を飾る石材として建築に利用される。 石英の破面や微量の雲母類などが煌めきを持つ一方、淡くくすんだ褐色、灰色、黄色、緑色などを帯び自然な色合いのクォーツァイトが石材に適している。 このように建築の石材に用いられるクォーツァイトは国内では産出せず、海外の石英質砂岩が変成して大規模に生じたクォーツァイトが用いられている。
石英以外の構成鉱物により美しく色の着いたクォーツァイトは、玉髄(カルセドニー)や碧玉(ジャスパー)等と同様に玉や宝飾品として利用されてきた。 クォーツァイトは現代でも比較的安価な宝飾品として人気が高い。 特にフクサイト(クロムを含む白雲母)の微細な粒子を含有し、鮮やかな緑色の美しいクォーツァイトはアベンチュリン(aventurine, 砂金石, さきんせき)と呼ばれる。 クォーツァイトは石英粒子の間隙に染料が染み込みやすいことから、人工的に様々な色に着色して宝飾品に用いる場合も多い。
アベンチュリン(ブラジル・ミナス・ジェライス州) -フクサイト(クロム白雲母)を含み緑色のクォーツァイト(珪岩)