黒雲母 biotite

黒雲母(くろうんも, こくうんも, biotite, バイオタイト) は K(Mg, Fe)3AlSi3O10(OH, F, Cl)2という化学組成からなる雲母の野外名。ケイ素、酸素、カリウム、鉄、マグネシウム、アルミニウム、水素、フッ素、塩素という元素を主成分とする珪酸塩鉱物
黒雲母という用語は、慣用的に用いられる名称であって(フィールドネーム、フィールド名、野外名という)、正式には金雲母、鉄雲母の2種類の端成分の固溶体であり、黒雲母は鉄とマグネシウムのどちらが多いかによってそれら2種の鉱物に分類される。 黒雲母の色は光沢のある黒色~やや褐色を帯びた黒色である。 黒雲母の結晶の形は薄い板状かそれが積み重なったもの、自形結晶では六角板状になる。 花崗岩をはじめとする珪長質火成岩に広く含まれる他、泥岩などの堆積岩が変成してできる変成岩にも広く含まれる造岩鉱物である。
biotite 黒雲母
黒雲母 画像幅約5cm

黒雲母の産出

黒雲母は特にカリウムに富み、ある程度の鉄やマグネシウムを含む岩石に含まれる事が多い。

花崗岩流紋岩などの珪長質火成岩には、黒雲母が広く含まれる。 これらの火成岩を形成するマグマにおいて、黒雲母の晶出順序は他の主要な構成鉱物である石英長石に比べて早いため、六角板状の自形結晶が見られることが多い。


黒雲母花崗岩。この花崗岩の場合、黒い粒子はほとんどすべて黒雲母である。

対照的に、花崗岩などのレキの入った礫岩などを除き、堆積岩には黒雲母はあまり含まれない。 これは、石英や長石と比べて黒雲母の方が風化しやすいため、堆積岩を形成する過程の中で蛭石や緑泥石、その他粘土鉱物などの別の鉱物に変質してしまうためである。 流紋岩質マグマの噴火によって生じた火山灰には、黒雲母がよく含まれているが、堆積岩として凝灰岩になる過程で変質してしまい、上記のような他の鉱物に変わっている事が多い。

しかし、泥岩凝灰岩などの堆積岩にはカリウムやある程度の鉄・マグネシウムが含まれており、これらが変成作用を受けて脱水反応が進むと黒雲母を含む変成岩が形成される。 主に結晶片岩片麻岩グラニュライトホルンフェルスなど変成岩で黒雲母を含むものが見られる。

鉱物標本として扱われるような数cm以上の黒雲母の結晶は、花崗岩質ペグマタイトに産するのが最も普通である。 その他、変成岩や火山岩の斑晶として黒雲母の大きな(自形)が産する例もある。

黒雲母の用語に関する話題

黒雲母の学名「biotite」の語源は、フランスの物理学者・鉱物学者ジャン=バティスト・ビオ(Jean-Baptiste Biot、1774 - 1862)の名前にちなんでハウスマンが1847年に命名した。 ビオが黒雲母の光学的特性を研究したことを記念して名付けられた。電磁気学における「ビオ・サバールの法則」も彼の名前にちなんでいる。

産業的利用

黒雲母そのものの産業的利用価値はほとんど無い。
しかし、黒雲母が風化して生じる蛭石(ひるいし, バーミキュライト、ヴァーミキュライト、vermiculite)は、800℃ほどで加熱風化処理した上で、土壌改良用の土として農業や園芸に使われる他、建設資材、消火剤、ガスケット・シール材、使い捨てカイロの主剤などの化学材料として広く使われている。 園芸用に広く市販されている「バーミキュライト」をよく観察すると、黒雲母の結晶の形である六角形板状の構造を見ることができる。

関連項目

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