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ロディン岩 rodingite

ロディン岩(rodingite, ロディンジャイト)蛇紋岩に伴って形成されるカルシウムを含む珪酸塩鉱物からなる岩石で、変成岩の一種。
ロディン岩
ロディン岩

ロディン岩の概要

かんらん岩などの超苦鉄質岩の蛇紋岩化作用では、カンラン石(Mg, Fe)2SiO4頑火輝石(直方輝石)(Mg,Fe)2Si2O6が水と反応して、蛇紋石Mg2Si3O5(OH)4水滑石Mg(OH)2磁鉄鉱Fe3O4を生じる。 このような蛇紋岩化反応は水からシリカを消費する一方で、水酸化物イオンOH-を放出することで強アルカリ性流体を生じさせる。 この際、超苦鉄質岩中にわずかに含まれる透輝石CaMgSi2O6などのカルシウムを含む鉱物が蛇紋岩化作用を被ると、マグネシウムや鉄の行方は上記と同様である一方、カルシウムは流体中に溶け込み鉱物にはあまり取り込まれない。 こうして超苦鉄質岩体内を通過して蛇紋岩化作用を引き起こした熱水は、シリカに枯渇し、カルシウムに富んだ、強アルカリ性の流体となる。

このような蛇紋岩化作用を引き起こした流体が、超苦鉄質岩の領域を通り抜けて、他のよりシリカに富んだ岩石(超苦鉄質岩に隣り合う岩石は斑れい岩などの苦鉄質岩であることが多い)に流入した際の岩石との反応を考えると、カルシウムを沈殿させ、シリカを消費するような交代作用が起こる。 具体的には、灰礬柘榴石-灰鉄柘榴石透輝石ヴェスヴ石斜灰簾石、また二次的には加水ザクロ石やぶどう石などが生じる。このように、蛇紋岩化作用に伴って生じるCaに富んだ鉱物からなる岩石のことをロディン岩と呼ぶ。 ロディン岩は、蛇紋岩中の球状、脈状、レンズ状などの形態で見られることが多い。また、ロディン岩と蛇紋岩との境界部分には通常、緑泥石が生じている。

ロディン岩形成の様子を示した模式図_蛇紋岩化反応に伴う交代作用でカルシウム珪酸塩鉱物が生じる
ロディン岩形成の様子を示した模式図
  

ロディン岩はあくまでも成因と主成分から定義された岩石なので、その見た目は構成鉱物や鉱物の粒径、産状などによって大きく異なる。 白色、灰白色、灰色、黄白色、淡緑色、淡黄緑色、淡褐色などを呈することが多いが、1つの岩体のなかでもばらつきがある。

ロディン岩形成は強アルカリ性流体に依る反応であるため、ジルコニウムやチタンなどの通常は流体にほとんど溶けない不動元素が流体に溶け込んで移動することが挙げられる。たとえば、ロディン岩中にはしばしば数mm以上に達するような熱水起源ジルコンの結晶が成長している。

ロディン岩はBell, M.らによってニュージーランドのダンマウンテン超苦鉄質岩体(Dun Mt.、ダナイトの由来)のロデイング川(Roding River)で見つかった岩石に対してはじめて名付けられた(Bell et al., 1911)。

ロディン岩の産出地

ロディン岩は蛇紋岩に伴って世界各地に広く産出する。ロディン岩を産する地質環境としては、主にオフィオライトや蛇紋岩メランジュである。

日本国内における認識として、ロディン岩は糸魚川地域で"偽ヒスイ(ニセ翡翠)"として拾われる緑色味を帯びた石として有名である。一方で、北海道のように"日高翡翠"としてロディン岩の中でも色の美しいものを飾石とみなす文化もある。

世界的に見た際にロディン岩に関連した代表的な鉱物産地を挙げると、黄緑色~紫色のヴェスヴ石やオレンジ色の灰礬柘榴石(ヘソナイトガーネット)などの美晶を産するカナダケベック州のJeffrey鉱山が挙げられる。

ロディン岩の利用

ロディン岩の用途としては上述の通り、岩石全体や含まれる鉱物結晶の宝飾品としての利用が挙げられるがあまり一般的ではなく、ロディン岩を対象とした鉱業採掘は殆ど行われていない。糸魚川地域では、ロディン岩はヒスイ輝石と間違えて拾われる石を意味するキツネ石の実態として有名である。

ロディン岩の空隙に成長したカナダケベック州のJeffrey鉱山のヘソナイトガーネットの結晶 オレンジ色の灰礬柘榴石、グロッシュラーガーネット
ロディン岩の空隙に成長したカナダケベック州のJeffrey鉱山のヘソナイトガーネットの結晶(オレンジ色の灰礬柘榴石)

関連項目

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参考文献

planetscope岩石鉱物詳解図鑑