頑火輝石 enstatite
頑火輝石の色は、くすんだ黄色~黄緑色、黄褐色、褐色など。硬度5.5、比重3.1~3.3。
超苦鉄質や苦鉄質の火成岩を構成する主要な造岩鉱物である他、強い変成作用を受けた変成岩を構成する鉱物としても産出する。また、隕石や他の惑星における造岩鉱物としても重要である。
- 頑火輝石の概要
- 頑火輝石の産出
- 関連項目
頑火輝石の概要
頑火輝石の組成式はMgSiO3と書き表せるが、輝石の一般式ABSi2O6(A, Bは陽イオン)に合わせて、Mg2Si2O6と書き表すことも一般的である。また、鉄珪輝石との固溶体をなすことを考慮して、(Mg, Fe)Si3Oや(Mg, Fe)2Si2O6と書くこともある。
かつては頑火輝石(En)と鉄珪輝石(Fs)との固溶体組成のモル比によって、古銅輝石(こどうきせき、bronzite、ブロンザイト、En;Fs=9:1~8:2)、紫蘇輝石(しそきせき、hypersthene、ハイパーズシン、En;Fs=8:2~6:4)、鉄紫蘇輝石(てつしそきせき、ferrohypersthene、フェロハイパージン、En;Fs=4:6~2:8)、ユーライト(eurite、、En;Fs=2:8~1:9)と細分して命名されていたが、現在ではEn:Fs=1:1のところで2分されている。
頑火輝石と同質異像の鉱物として、単斜晶系の結晶構造を持つ単斜頑火輝石(clino-enstatite、クリノエンスタタイト)のほか、高圧下で生じるものとして秋本石(akimotoite)、ブリッジマナイト(bridgmanite)がある。
頑火輝石の産出
かんらん岩、輝岩、斑れい岩、玄武岩、安山岩などの超苦鉄質や苦鉄質、中間質の火成岩を構成する主要な造岩鉱物である。
頑火輝石は共出する鉱物よりも比較的風化に強い。かんらん岩の場合、かんらん石が蛇紋石化を受けた後も頑火輝石は残っていることがあり、黒い蛇紋石の地の部分に枯れ草色の頑火輝石の劈開面が見られる。また、苦鉄質~中間質の火山岩が風化した場合、かんらん石や長石など他の鉱物が淘汰され、頑火輝石が砂鉱として濃集することがある。
輝石ホルンフェルスやグラニュライトなど、強い変成作用を受けた変成岩を構成する鉱物としても産出する。
さらに、隕石や他の惑星における造岩鉱物としても重要である。頑火輝石は石質隕石や石鉄隕石を構成する鉱物として広く見られる。
火山岩から分離した頑火輝石(紫蘇輝石) Loc.福島県猪苗代湖畔