蛇紋石 serpentine

蛇紋石(じゃもんせき, serpentine、サーペンテイン)フィロ珪酸塩鉱物の1つのグループ名で、主としてクリソタイル、リザーダイト、アンチゴライトの3種類の鉱物をまとめた総称として用いられる。蛇紋石の組成はおおよそMg3Si2O5(OH)4と表される(厳密には様々であるが)、マグネシウムを主成分にもつ代表的な含水鉱物の1種である。主にカンラン石が加水することで生じる。

蛇紋石

蛇紋石サブグループの鉱物

カオリナイトはカオリナイトサブグループに属し、さらにカオリナイトサブグループは蛇紋石サブグループおよびグリーナライト(Greenalite)などと合わせてカオリナイト-蛇紋石グループを構成している。

蛇紋石サブグループの鉱物としては以下のものが挙げられる。

カオリナイトサブグループの鉱物については「カオリナイト(kaolinite)」のページを参照されたい。

主要な蛇紋石鉱物3種類の関係

一般的に蛇紋石という場合に指す鉱物種はリザーダイト、アンチゴライト、クリソタイルの3種類である。さらに積層タイプ(ポリタイプ)の違いなども細分化すると、後2者はリザーダイト-1M、リザーダイト-1T、リザーダイト-6T1、リザーダイト-2H1、リザーダイト-2H2、単斜クリソタイル、直方クリソタイルと分けられる。本項目ではポリタイプによる細分化はせずに、蛇紋石の主要3種類について記述する。いずれにせよ、これらはすべてMg3(Si2O5)(OH)4という組成を持った同質異像の鉱物として扱われるが、後述の通り実際には組成が異なることが多い。

蛇紋石の結晶構造は、SiO42-四面体(すなわち4配位のケイ素)が点を共有するシートと、MgO610-八面体(6配位のマグネシウム)の線を共有する3八面体構造のシートとが結合したものを1枚の単位とし、その複合シート同士が水素結合によって重なった構造である。このシートの重なり方はリザーダイト、アンチゴライト、クリソタイルによって異なる。リザーダイトは単純にケイ素-酸素とマグネシウム-酸素のシートが互層した構造を持つ。アンチゴライトはケイ素-酸素のシートが周期的にねじれたような形を持ち、全体として波打つようなシート構造を持つ。クリソタイルはケイ素-酸素とマグネシウム-酸素のシートが同心円状に重なっている。

蛇紋石鉱物3種は生じる温度によって変化し、組成によっても変わるが、リザーダイトは50-300℃と比較的低温で、アンチゴライトは250-600℃と比較的高温で生じる。クリソタイルは0-300℃で生じるが、岩石中の亀裂を充填するなどの形で産し、準安定な相と考えられている(Evans, 2004)。

蛇紋石の産業的利用

見た目の美しい蛇紋石は研磨して宝飾品や酒盃などの工芸品などとして用いられることもある。宝飾品などに利用可能な蛇紋石のことを”貴蛇紋石”(きじゃもんせき)と呼ぶことがある。貴蛇紋石は鉱物としてはリザーダイトかアンティゴライトである。

蛇紋岩の重要な用途として石材が挙げられる。 建築業界や石材業界では、蛇紋岩や蛇灰岩は"大理石(マーブル)の1種"として扱われる。緑色系の大理石として販売されている石材の多くは、岩石学的には蛇紋岩やそれに関連した蛇灰岩などの岩石である。 このような蛇紋岩の石材としての取り扱いは、岩石学的な意味での大理石と同様に硬度が低い鉱物を主体としていることや、研磨面の見た目が類似していることに基づいていると考えられる。

また、蛇紋石は肥料の原料としても用いられる。蛇紋岩とリン鉱石を炉で溶融し急冷破砕したガラス状の固体を熔成リン肥と言い、農地へ散布することで土壌へのリン酸分の供給や酸性度の低下などの効果がある。

クリソタイルは石綿(アスベスト)として採掘し利用していたが、石綿の健康への悪影響から現在では採掘や利用は行われていない。現在でも、クリソタイルなどの石綿を含む蛇紋岩体での工事では粉塵などに特別の注意が必要となることもある。

関連項目

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