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アンチゴライト antigorite

アンチゴライト(アンティゴライト, antigorite)はMg3(Si2O5)(OH)4 という組成を持ち単斜晶系の鉱物。 蛇紋石サブグループの代表的な1種で、フィロ珪酸塩鉱物に分類される。

アンチゴライト

アンチゴライトの特徴

アンチゴライトの色は緑色、青緑色、灰緑色、白色などで、ガラス光沢や樹脂光沢を示す。アンチゴライトの硬度は2.5~3.5、比重は2.6で、{001}方向に完全なへき開を示す。リザーダイトに比べて暗い色やくすんだ色を示すことが多い。

アンチゴライトはリザーダイトクリソタイルと並んで一般的な蛇紋石鉱物3種のうちの1つとして蛇紋岩を構成する。 蛇紋石の結晶構造は、SiO42-四面体(すなわち4配位のケイ素)が点を共有するシートと、MgO610-八面体(6配位のマグネシウム)の線を共有する3八面体構造のシートとが結合したものを1枚の単位とし、その複合シート同士が水素結合によって重なった構造である。アンチゴライトはケイ素-酸素のシートが周期的にねじれたような形を持ち、全体として波打つようなシート構造を持つ。波の”波長”は様々であるが、約17が多く、実際的にはアンチゴライトはMg48(Si34O85)(OH)62という組成を持った鉱物のようになる。この組成はMg3(Si2O5)(OH)4の単純な17倍から、ブルーサイト(Mg(OH)2)を3単位引いた組成に当たる。したがって、アンチゴライトはリザード石やクリソタイルよりもシリカに富んだ組成であると言える。

アンチゴライトの和名として葉蛇紋石(ようじゃもんせき)という語が使われていたことがあるが、最近ではあまり使われない。また、四角柱が集合した形状となったアンチゴライトを硬蛇紋石(こうじゃもんせき)と呼んでいたこともあるが、これは四角柱状の結晶ではなく結晶集合体である。


いわゆる”硬蛇紋石”の構造をもつアンチゴライト

アンチゴライトの産出

アンチゴライトは約250-600℃と比較的高温で生じる蛇紋石である。さらに、上記の通りリザーダイトなどと比べてアンチゴライトはシリカに富んだ蛇紋石であるため、原岩や蛇紋岩化作用を引き起こした流体の組成によっても産出が左右される。アンチゴライトは主に海洋プレートの比較的下部の蛇紋岩や、造山帯の変成岩体に伴われる超苦鉄質岩体などに見られる。

アンチゴライトの産業的利用

アンチゴライトに限定した産業的利用方法は無いが、蛇紋岩を構成する鉱物として石材や飾り石、化学工業の原料などとして採掘、利用される。

関連項目

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