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クロミタイト chromitite

クロミタイト(chromitite) は、大半がクロム鉄鉱などのクロムスピネルからなる岩石。主にかんらん岩(特にダナイトハルツバージャイト)やそれらが変質して生じた蛇紋岩、あるいは斜長岩などに伴って産する。
クロミタイト
クロミタイト(画像幅約5cm、Loc. 愛媛県赤石鉱山)

クロミタイトの構成鉱物と特徴

クロミタイトを主に構成する鉱物はクロム鉄鉱などのクロムスピネルである。クロムスピネルとは、クロム鉄鉱のほかにクロム苦土鉱スピネル鉄スピネル(hercynite)の固溶体として(Mg, Fe)(Cr, Al, Fe3+)2O4と表されるスピネルグループ鉱物のことを意味する。このため、クロミタイトの和名としてクロム鉄鉱岩という用語を使うこともある。
この他にクロミタイトに微量に含まれる鉱物として、カンラン石(苦土橄欖石)や直方輝石(OPX)パーガス閃石金雲母灰クロム柘榴石蛇紋石菫泥石(クロムを含み紫色を呈する緑泥石の変種)などがある。

クロム鉄鉱をはじめとするクロムスピネルは風化や変質に対して強く、また色のバリエーションもかなり少ないため、クロミタイトの見た目は大抵の場合、これらの鉱物の色である黒色の鈍い金属光沢を呈する岩石となる。ただし、クロムスピネルの粒度やその他の付随した構成鉱物によって肉眼的な色味は変わり、緑色、灰緑色、褐色、紫色などを帯びることがある。

クロミタイトの産状と成因

クロミタイトはその産状から、主に層状クロミタイトポディフォームクロミタイトに分けられる。

層状クロミタイト

層状クロミタイト(stratiform chromitite)とは、水平方向に数百mから数km以上の連続性の良い層として産するクロミタイトのことを指し、地殻内に貫入した苦鉄質から超苦鉄質マグマによって形成される層状貫入岩体中に見られる。厚さは数cmから数十mまで様々である。 層状クロミタイトの成因は、マグマだまり中での結晶分化によると考えられたこともあった(いわゆる"正マグマ鉱床")が、苦鉄質から超苦鉄質マグマに含まれるクロムスピネルの割合は極めて小さく、重力による沈降だけで濃集することは難しいと考えられる。マグマだまり中で分化して生じたやや珪長質なメルトと苦鉄質メルトの反応、あるいは地殻岩石の溶融で生じた花崗岩質メルトと苦鉄質メルトの反応によって、クロムスピネルが選択的に生じて沈降したという説が提唱されている(Irvine, 1977)。 しかし未だ定説はなく、マントルからの上昇によるマグマの減圧(Latypov et al., 2018)、マグマの発泡による加圧(Lipin, 1993)、マグマの酸素フガシティーの上昇(Snethlage and Von Gruenwaldt,1977; Campbell and Murck, 1993)などのモデルも提唱されており、産地によって成因が異なる可能性も指摘されている。

ポディフォームクロミタイト

ポディフォームクロミタイト(podiform chromitite)とは、マントル構成岩であるかんらん岩やその変質物の蛇紋岩の中に産し、連続性が悪く、岩塊状、レンズ状、莢状(きょうじょう)、芋状などの形態のクロミタイトのことである。ポディフォームとは、ポッド(pod)、すなわち豆の莢(サヤ)のような形、という意味である。

ポディフォームクロミタイトはほぼ例外なくダナイトに囲まれて産し、さらにその外側にはハルツバージャイトがあることが普通である(Quick, 1981; Kelemen and Ghiorso, 1986; Kelemen, 1990)。これらの特徴から、ポディフォームクロミタイトはマントルかんらん岩中を玄武岩質~安山岩質~花崗岩質などの様々な組成のメルトが通過した際に、メルトとの反応で形成した岩石であると考えられている(Arai and Yurimoto, 194; 1995; 。

クロミタイトの資源的利用

クロミタイトはクロムの鉱石として極めて重要である。また、クロミタイトには白金族元素がしばしば含まれており(自然白金、自然オスミウムなど)、これらの元素の鉱石としても極めて重要である

関連項目

参考文献

planetscope岩石鉱物詳解図鑑