スピネル spinel

スピネル(spinel, 尖晶石, センショウセキ)はMgAl2O4という組成を持ち立方晶系の酸化鉱物の1種。マグネシウム、アルミニウム、酸素からなる。
赤色のスピネルの結晶。画像幅約3cm。インドの漂砂鉱床から採取されたもの左側の三角板状のものはスピネル式双晶による。赤色のルビーのような宝石スピネル。
赤色のスピネルの結晶。画像幅約3cm。インドの漂砂鉱床から採取されたもの。
左側の三角板状のものはスピネル式双晶による

スピネルの特徴

スピネルの硬度は7.5~8、比重は3.58。ガラス光沢をもち、色は純粋なものは無色であるが、灰色、桃色~赤色、紫色、褐色、青色、黄色、緑色など様々である。条痕は無色。へき開はないが、裂開をもつ。正八面体結晶になることが多い。正八面体が2つ組み合わさったスピネル式双晶となることも多く、しばしば三角板状の結晶となる。

鉱物種としてのスピネルと、後述の鉱物グループ名としてのスピネルとを区別するために、苦土スピネル(苦土尖晶石、magnesiospinel)と呼ぶこともある。地球科学や物質科学などの分野において、"スピネル"という用語が鉱物種としての苦土スピネルではなくグループ名として使われることもしばしばあるので注意が必要である。

スピネル型結晶構造

スピネルの結晶構造はスピネル型結晶構造と呼ばれる。スピネル型結晶構造をもつ鉱物をまとめてスピネルスーパーグループ(Spinel Supergroup)と呼ぶ。スピネルスーパーグループには酸化鉱物の他に硫化鉱物や珪酸塩鉱物が含まれる。

スピネルスーパーグループの中でも酸化鉱物のものをオキシスピネルグループ(Oxyspinel Group)といい、A2+D3+2O4という形式で表される鉱物をまとめてスピネルサブグループ、A4+D2+2O4という形式で表されるものをウルボスピネルグループとそれぞれ呼ぶ。 以下にスピネルサブグループとウルボスピネルサブグループの一般的な鉱物を列挙する。

超苦鉄質岩や苦鉄質岩にはCrを含むオキシスピネルがよく含まれており、それらをまとめてクロムスピネルと呼ぶ。クロムスピネルの主成分はスピネル、鉄スピネル、クロム鉄鉱、クロム苦土鉱の固溶体として表される。

一方、硫化鉱物でスピネル型結晶構造をもつものをチオスピネルグループ(Thiospinel Group)、セレン化鉱物のものはセレニオスピネルグループ(Seleniospinel Group)とそれぞれ呼ばれる。

スピネルの産出

マントル構成岩および苦鉄質深成岩・火山岩中のスピネル

かんらん岩斑れい岩玄武岩などの岩石には副成分鉱物としてクロムスピネル、すなわちクロムを含むスピネルやクロム鉄鉱、クロム苦土鉱などが含まれていることが多い。かんらん岩の中のスピネルは数mm程度の粒状や数cm以上の幅の脈状となって産することもあるが、斑れい岩玄武岩では1mm以下の微細な粒子として産することがほとんどで肉眼的な識別は困難である。

変成岩中のスピネル

珪酸塩分に乏しい変成岩の中にスピネルは生じる。 特に苦灰岩起源のスカルンでよく見られ、数cm以上の大きさの自形結晶に成長することがある。 また、珪酸塩分の少ない組成を持った泥質変成岩や苦鉄質変成岩などにも生じることがある。

産業的利用

赤色などの美しい色をした透明感のあるスピネルは宝石として用いられる。 漂砂鉱床の円磨されたものや研磨された宝石などの自形結晶の形のわからないものをルビー(赤色のコランダム)と区別するのはやや難しいが、硬度、比重ともに異なる。主な宝石質スピネルの産地はスリランカ、ミャンマー、インド、タンザニアなどが挙げられ、いずれもスカルン鉱床やそこから分離した漂砂鉱床から採掘されている。

関連項目

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