トーナル岩 tonalite

トーナル岩(神奈川県丹沢)
トーナル岩の定義と概要
トーナル岩は「石英が20-60体積%で、かつ長石のうち斜長石に分類されるものが90-100%である岩石」と定義される。QAPF図において右端に当たる領域で表わされる範囲である。 花崗閃緑岩よりもさらに斜長石(曹長石に近い組成)が多く、アルカリ長石(カリ長石に近い組成)が少ない。 また、閃緑岩、石英閃緑岩よりもさらに石英を多く含む岩石ということもできる。
トーナル岩の組成は、火山岩のデイサイトの一部に対応する。デイサイトは花崗閃緑岩、トーナル岩の両方を合わせた領域の組成を持つ火山岩である。
トーナル岩の主な構成鉱物は、無色鉱物である曹長石(albite)、石英(quartz)が90%程度を占め、
これに10%程度の有色鉱物を伴う。有色鉱物は大抵の場合、角閃石族(amphibole family)または黒雲母(biotite)などである。
アクセサリー鉱物(微量ではあるが普通に含まれる鉱物)として、磁鉄鉱 magnetite、チタン鉄鉱 illmenite、磁硫鉄鉱pyrrhotite、緑簾石 epidote、燐灰石 apatite、ジルコン zircon、褐簾石 allanite、チタン石(titenite、スフェーンspheneとも)等が挙げられれる。
トーナル岩の定義は無色鉱物の量比で決まっているため、有色鉱物と無色鉱物の量比で見ると一般的な斑れい岩などの苦鉄質岩に相当する程度の多量の有色鉱物を含有するにも関わらずトーナル岩とされる岩石がしばしば存在する。このような岩石をマフィックトーナライト(mafic tonalite, 苦鉄質トーナル岩)と呼ぶことがある。
成因・産出地
実験岩石学により、花崗岩類は含水状態の玄武岩質岩石が高温に晒されて部分溶融することで形成することが知られている。地球の大部分を構成するマントルのかんらん岩を溶融させて花崗岩類を形成することはできない。 含水した玄武岩質岩石の部分溶融という条件が達成されるのは、ほとんどの場合プレートの沈み込み帯である。
石材としての産業利用
狭義の花崗岩と同様に石材に利用される。