鋭錐石 anatase

鋭錐石(エイスイセキ, anatase, アナテース、アナターゼ)は酸化チタン(TiO2: チタン、酸素)からなる酸化鉱物の1種。 正方晶系、硬度5.5-6、比重3.9。
鋭錐石(エイスイセキ, anatase, アナテース, アナターゼ)
鋭錐石

鋭錐石の概要

鋭錐石の色は褐色、黄褐色、青色、濃青色であるが、透明度が低く色が濃いと黒色に近い色に見える。 屈折率はダイヤモンドよりも高く、また金属光沢を帯びることもある。 結晶の形は細長く伸びた八面体で、結晶が細長く伸びた方向(c軸方向)と直交する方向に条線が見えることが多い。

化学的には酸化チタン(IV)と呼ばれる物質で、鉱物名を取ってアナターゼ型酸化チタンと呼ばれることもある。 フッ酸や熱濃硫酸および溶融アルカリ塩に溶解する一方、それ以外の酸やアルカリ、有機溶媒などには溶解しない。

鋭錐石と同じく二酸化チタンからなる鉱物として、ルチル(Rutile, 金紅石、キンコウセキ)板チタン石(brookite、ブルッカイト)が挙げられる。これらは鋭錐石と同じ組成を持つものの結晶構造が異なる多形(同質異像)である。

鋭錐石の産出

主にアルパイン式脈と呼ばれる砂岩起源変成岩や片麻岩などの石英脈の中に数cm以下の結晶で産する。石英の他、曹長石白雲母ルチル板チタン石、緑泥石などを伴って産する。

スイスやオーストリア、パキスタン、ネパールなどの標本が多く出回っているが、その他にも世界各地から産出する。 日本国内では山梨県内の乙女鉱山、竹森、平沢、水晶峠などといった水晶産地で鋭錐石が見られる。

チタン鉄鉱灰チタン石(ペロブスカイト)チタン石(スフェーン)などのチタン鉱物が変質することで、微細な結晶の鋭錐石やルチルの集合体になることがあり、そのようなものはリューコキシン(leucoxene, 白チタン石, しろちたんせき)と称される。

鋭錐石の産業的利用

天然に産する鋭錐石そのものには資源的価値はほとんど無いが、ルチルやチタン鉄鉱(イルメナイト)から精製したチタンを原料に人工的に鋭錐石と同じ結晶構造を持つ酸化チタン(IV)を合成し光触媒などに活用されている。

関連項目

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