東京工業大学博物館 in 百年記念館

2012年5月訪問

東京工業大学百年記念館は、創立100周年の1981年、「東京工業大学創立百年記念事業」の一環として計画・建造され、1987年11月の開館しました。
東工大大岡山キャンパスの正門の目の前にそびえる、東工大のオブジェ的な、かまぼこ板の刺さったようなヘンチクリンな形の建物ですが、東工大生たちからは深く愛されています(たぶん)。

実は、見かけの割には、意外と小ぶりです。開館時間であれば、いつでも誰でも無料で入館・見学できます。

東京工業大学博物館(百年記念館)_建築外観_百年記念館は東工大大岡山キャンパス正門前のオブジェのような半円形のものが乗っかった建物

百年記念館の1階部分は天井が広く、全体的に広々とした雰囲気がありますが、昼間はカフェとしてランチを食べることが出来ます。
また、大学案内のパンフレットなども取り揃えられています。
時々、特別展のような形で展示が行われることもあります。少し前にはシーラカンス展っていうのが少し前に行われていましたね。東光台とかかわりの深い益子焼の展示も行われており、印象的でしたね。

そして2011年から、百年記念館は「東京工業大学博物館」という扱いになったようです。
大学博物館だと、旧帝大などではありあまる標本や歴史的価値の高い資料を沢山持っていて豪勢な展示をしているところもあるようですが、東京工業大学博物館は小さな部屋で、モダンな感じでこじんまりと展示しています。
展示内容は、地上2階部分に
 地球史
 百年記念館の設計/篠原一男について、
 通信技術
 東京工業大学の歴史

地下部分に、
 化学、窯業
 建築
 ロボット、機械

などがあります。

東京工業大学博物館(百年記念館)_建築外観

この記事では、せっかくplanetscopeということで、地球史の展示についてご紹介します。
東京工業大学地球惑星科学専攻・地球惑星科学科(東工大地惑)は「地球史資料館」というプレハブの建物の展示場所&実験設備&岩石標本収蔵庫を持っていたのですが、新図書館建設にともなってプレハブは解体、実験設備や大量の岩石標本は本館地下に移動、そして展示については小型標本のみが、この百年記念館の東京工業大学博物館として展示されています。
以前のプレハブの地球史資料館にあった岩石の大塊の展示物は、本館の中庭で野ざらしになっており、岩石の表面にコケがつき始めたりなど、人知れず自然に帰りつつあります...もったいない事この上ない...

↓東京工業大学博物館の地球史展示室。小さな部屋のこじんまりとしたモダンな展示です。

東京工業大学博物館(百年記念館)_地球史資料館展示の様子

普通の博物館との大きな違いとして、この地球史の展示室は東工大地惑の研究内容をかなり大きく反映している展示なので、先カンブリア時代の岩石サンプルが中心となっています。 この写真に写っている岩石はストロマトライトを含む炭酸塩岩やBIF(Banded Iron Formation:縞状鉄鉱層)がほとんどですが、さらに古い西オーストラリアやイスア地域の堆積岩類なども多数展示してあります。

東京工業大学博物館(百年記念館)_地球史資料館展示_ストロマトライト_縞状鉄鉱層

普通の博物館だと、顕生代がどうしても中心になってしまいますよね。その分、特に岩石などに興味がない人にとっては地味極まりない展示ですが…笑
また、岩石の塊などは写真のようにガラスケースなしに直においてあるだけの展示なので、ルーペなどを持っていけばじっくりと観察することも可能なのが嬉しいです!

↓南アフリカのキンバーライトの塊。ルーペで好きなだけ観察できますが、ダイヤモンドはついてなかったようです…

東京工業大学博物館(百年記念館)_地球史資料館展示_キンバーライト

↓こちらはコマチアイトの塊。スピニフェックス構造がよく見えます。本来ならカンラン石からなる火山岩ですが、すでに蛇紋岩化しさらに表面は風化によって赤茶色の二次的な鉱物に覆われています。
コマチアイトは地球史上重要な岩石なのですが、サンプルを展示している博物館はそう多くないように思います。

東京工業大学博物館(百年記念館)_地球史資料館展示_スピニフェックス状のコマチアイト

古い岩石の本では、カンラン岩の火山岩にあたるのがキンバーライトであるという説明が見受けられますが、それは誤っています。 カンラン岩の火山岩にあたるのはコマチアイトで、キンバーライトはカーボナタイトと同じ組成の特殊な多量のガス成分を含む炭酸塩からなるマグマがマントル橄欖岩などと作用してできたと言われています。

↓こちらはチャーノッカイトや結晶片岩など変成帯の展示ですが、これも、こういった品揃えになるような博物館はめったに無いように思います。

東京工業大学博物館(百年記念館)_地球史資料館展示_チャーノッカイトや結晶片岩など変成岩類

地球史上、重要であるにもかかわらずほかでは余り見られないような立派な岩石の展示が多数あるのに対して、残念ながら鉱物標本の展示は貧弱です(笑)

東京工業大学博物館(百年記念館)_地球史資料館展示_鉱物標本

東京工業大学博物館(百年記念館)_地球史資料館展示_鉱物標本

およそ、東京近辺のHミネラロジーやK宝飾やP商会などから購入された標本であることがわかっていますw 開館したての頃は、自前のラベルが造られていないため、購入したまんまのラベルがそのまま展示されていたので、わかってしましましたw
見ての通り、ほとんどが小学生のお年玉の範囲内で購入可能なレベルのものしかないようですね...しかも、ラベルに産地が書いてないっていうのも、展示としてはちょっと...

..という風に、産地書け、って文句つけていたら、なぜかひとつだけ「鹿児島県、菱刈鉱山、山田坑」とやったら詳しく産地書いてある金鉱石(自然金)の標本がありました。なぜこうなったのかよくわかりません…笑

東京工業大学博物館(百年記念館)_地球史資料館展示_菱刈鉱山山田坑の金鉱石

鹿児島県菱刈鉱山のトラスコット石Truscottite。これまた、他の鉱物標本とは異なってマニアックな国産の品がありますw
プレハブ地球史資料館時代には、入ってすぐのところにゴロゴロと大量のトラスコット石があったのですが、今展示されているのはこのひとかたまりだけです。残りはどこに行ってしまったのか...

東京工業大学博物館(百年記念館)_地球史資料館展示_菱刈鉱山のトラスコット石truscottite

せっかくなので、電気通信技術の展示についても少し載せておきます。

展示室の様子。通信技術の発達と東京工業大学の功績などについて展示されています。

東京工業大学博物館(百年記念館)_電気通信技術展示

東京工業大学博物館(百年記念館)_電気通信技術展示

東京工業大学の発明として水晶振動子があるので、水晶の展示もありました。
鉱物マニアとしてはつい目が行きますが、別に、実物があるわけではありません...右の写真のような模型はありました。

東京工業大学博物館(百年記念館)_電気通信技術展示東京工業大学博物館(百年記念館)_電気通信技術展示

こういった感じで、博物館というにしてはこじんまりとした展示ですが、細かいところで一見の価値ある展示が数多く隠されているので、もし大岡山の近くまで来たらぜひお立ち寄りください。

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