斑れい岩の定義は、「無色鉱物としてほとんど灰長石しか含まず(石英、アルカリ長石共に10 体積%以下で残り全て灰長石)で、全体に占める無色鉱物の割合が10-90体積%の深成岩」と言い表される。
90体積%以上を灰長石が占める岩石は、斜長岩(アノーソサイト)と呼ばれる。
斑れい岩の灰長石が曹長石に置き換わると閃緑岩と呼ばれる岩石になる。
斑糲岩の有色鉱物は、輝石やかんらん石が主である。
含まれる有色鉱物の一般的な傾向として、斑れい岩の方が輝石やかんらん石を、閃緑岩の方が角閃石をそれぞれ含みやすい。
ただし、斑れい岩の輝石やかんらん石は二次的に角閃石などに変質している場合も多いので注意が必要である。
小学校、中学校、高校などの地学の教科書では「斑糲岩は黒っぽい苦鉄質の岩石」とされるが、それは正しくない。灰長石を90体積%も含む斑れい岩は紛れもなく「白っぽい岩石」である。
ただし、斑れい岩の化学組成は上記の定義を満たす限り、たいていの場合はSiO2が45~52wt%という苦鉄質の分類には入る。
とはいえ、灰長石ばかりでマグネシウムや鉄を含む鉱物をほとんど持たない岩石を「苦鉄質」と呼ぶのは無理があるため、強いて言うなら「塩基性深成岩」となるだろうが、それはそれで違和感がある。
狭義の斑れい岩は灰長石と単斜輝石(CPX)からなるものとされている。 灰長石と直方輝石(OPX)からなるものはノーライト(norite)、灰長石とかんらん石からなるものはトロクトライト(troctolite)とそれぞれ呼ばれる。
上記の分類に入らない鉱物を冠して、詳細な名前が付けられる。鉱物名は少ない順に並べ、「黒雲母角閃石両輝石斑れい岩」「角閃石かんらん石ノーライト」などと呼ばれる。
斑れい岩は無色鉱物である灰長石と有色鉱物である輝石・かんらん石との体積比が1:9~9:1と大きく変動することから、見た目の色合いが大きく変わる。 有色鉱物の割合の多い斑れい岩を優黒質斑れい岩(ゆうこくしつはんれいがん、melanocratic gabbro、メラノクラティックガブロ)、無色鉱物の割合の多い斑れい岩を優白質斑れい岩(ゆうはくしつはんれいがん、leucocratic gabbro、リューコクラティックガブロ)とそれぞれ呼ばれる。
斑れい岩の構成鉱物が巨晶になったものは、斑れい岩質ペグマタイトと呼ばれる。 斑れい岩質ペグマタイトの場合、花崗岩質の一般的なペグマタイトと異なり、晶洞のような空隙が開いていることは少ない。
斑れい岩質ペグマタイトの例
Loc. 愛媛県今治市波方町馬刀潟
斑れい岩を構成する輝石やかんらん石は地殻内では変質によって角閃石や緑泥石などに変化しやすい。 そのような変質を被った斑れい岩を変斑れい岩(へんはんれいがん、metagabbro, メタガブロ)と称する。 さらに変質が進むと、変成作用として扱われ、緑色岩などの変成岩と呼ばれるようになる。
現在の地球上でもっとも大量の斑れい岩を保持しているのは地球表面の70%を覆う海洋地殻であろう。 現在の海洋地殻は厚さ約6-7kmで、上部の約3kmは玄武岩やドレライト(輝緑岩)などからなり、下部は層状の斑れい岩からなる。さらにその下部にはかんらん岩からなる海洋リソスフェアがある。 このような海洋地殻の断片は沈み込み帯でオフィオライトとして付加することがあり、地表に露出して見られることもある。 日本では大江山オフィオライト、夜久野オフィオライト、嶺岡帯などのオフィオライトで海洋地殻として形成した斑れい岩が見られる。
ホットスポットや沈み込み帯などにおける苦鉄質マグマによる火山活動では、地表で玄武岩質マグマを噴出する火山活動が起こる一方で、
その地下ではマグマ溜まりがゆっくり冷えて固まることで巨大な斑れい岩の貫入岩体が形成される。
火山活動が終了して地質学的年月がすぎると徐々に上部が侵食されて、下部の斑れい岩体が地表に露出するようになる。
グリーンランドのスケアガード貫入岩体は、マグマ溜まりでの結晶分化過程の地質学的・岩石学的研究に重要な貢献をした。
日本では高知県室戸岬などで斑れい岩質の貫入岩体が見られる。
また、海洋プレート上のホットスポット火山活動としてできた海台がジュラ紀に付加したとされる御荷鉾緑色岩体には斑れい岩が多く含まれている。
沈み込み帯ではかんらん岩が溶融して初生的マグマとして玄武岩質マグマが生じ、それはモホ面まで上昇する。 そのため、大陸地殻下部は主に玄武岩質マグマがゆっくり冷えて固まった斑れい岩からなると考えられている。 このような大陸下部地殻起源の斑れい岩に関連すると考えられている例として、花崗岩類バソリスに普遍的に伴われる斑れい岩体が挙げられる。 ただし、大陸下部地殻の大半の部分は変成作用を被っており、斑れい岩はグラニュライトや角閃岩などの変成岩に変化していると考えられる。
緻密で大粒の結晶からなるため、岩石カッターで切断し表面を研磨して光沢が出ることから、建築石材や墓石として利用される。 日本では、花崗岩の石材名である御影石と対比して、黒御影(くろみかげ)という石材名で呼ばれている。