長石 feldspar

長石(ちょうせき, feldspar, フェルスパー)は、地球の地殻を構成する最も一般的な造岩鉱物のグループであり、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のアルミノテクト珪酸塩からなる単斜晶系または三斜晶系の鉱物のグループ名。 一般的な長石の化学組成は、アルミニウム、ケイ素、酸素を基本的に含み、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量の違いによって種類が分けられる。
長石の色は純粋なものは無色であるが、微量成分や放射線、微小な包有物などの影響で白色、灰色、黒色、紫色、黄色、桃色、淡緑色、青緑色など様々な色を帯びる。
地球の大陸地殻を構成する花崗岩類に最も多く含まれる鉱物グループであり、また海洋地殻を構成する玄武岩斑れい岩にも多量に含まれる。さらに火成岩、堆積岩、変成岩のいずれであっても長石を含むものは多く、地球表層のあらゆるところで普通に見られる。
長石の代表的な端成分であるカリ長石の結晶 ペグマタイトから産したカリ長石(山梨県甲府市黒平) large crystal of K-feldspar from pegmatite in Kurobera, Yamanashi, Honshu Is., Japan
長石の代表的な端成分であるカリ長石の結晶(山梨県甲府市黒平)

長石の概要と分類

一般化した長石の化学式は、X2-x[Z1+xSi3-xO8] (X= Na, K, Rb, Ca, Sr, Ba, NH4; Z=Al, B)と表され、それらの間で固溶体をなす。 このうち、X= Na, K, Caかつ Z=Alの3つの端成分を持つ固溶体が普通に見られる長石の組成であり、その他の組成を持つ長石の産出は稀である。
それら普通に見られる長石は、化学組成によって大まかに斜長石アルカリ長石の2つに分類されている。

長石の分類 斜長石とアルカリ長石の固溶体 灰長石、曹長石、カリ長石
長石の固溶体関係。斜長石アルカリ長石の2つに分類されている。
高温の時のみ、薄い灰色と白色をあわせた領域の固溶体組成の長石が出現する。白色は低温でも存在する領域。

斜長石

灰長石(かいちょうせき, anorthite、アノーサイト)Ca[Al2 Si2 O8] と曹長石(そうちょうせき、albite、アルバイト)Na[AlSi3 O8]の固溶体。三斜晶系。 連続的な組成の固溶体が存在する。一般化した組成は、(Cax, Na1-x) Al1+xSi3-xO8 (x=0~1)と表される。かつては固溶体の組成によって、灰曹長石(oligoclase, オリゴクレース, Ab90-70An10-30, すなわちNa:Ca=90:10~70:30)、中性長石(andesine, アンデシン, Ab70-50An30-50) 、曹灰長石(labradorite, ラブラドライト, Ab50-30An50-70)、亜灰長石(bytownite, バイトウナイト, Ab30-10An70-90)と細分化されていたが、現在は正式には用いられない。ラブラドライト(曹灰長石)は干渉によって青色、黄色、オレンジ色などの閃光を放つものがあり、宝石として扱われることがある。

アルカリ長石

カリ長石K[Al Si3 O8]と曹長石(そうちょうせき)Na[AlSi3 O8]の固溶体。一般化した組成は、(Kx, Na1-x)[AlSi3O8] (x=0~1)と表される。 高温では連続的な組成の固溶体が存在するが、低温では中間的な組成のあるカリ長石は存在しない。

カリ長石側の端成分は、結晶構造の微妙な違いから正長石(orthoclase、オルソクレース、単斜晶系)と微斜長石(microline、マイクロリン、三斜晶系)の2種類に分けられている。これら2種類は肉眼的にはほとんど区別できない。特徴的なものは偏光顕微鏡下で区別できるが、これら2種類の鉱物の結晶構造は連続的に変化することが可能であるため、厳密な区別は難しい。微斜長石は微量の鉛を含むことで鮮やかな青緑色を呈することがあり、アマゾナイト(amazonite、天河石、てんがせき)という名前の宝石として扱われる。

高温でのみ存在するカリ長石と曹長石との中間的な組成の長石は、K>Naのものはサニディン(sanidine、玻璃長石)、Na>Kのものはアノーソクレース(anorthoclase, 曹微斜長石)と呼ばれる。サニディン、アノーソクレースともに青色の閃光を放つ物があり、ムーンストーン(moon stone、月長石)という名称の宝石として扱われる。

博物館に展示される様々な種類の長石(ハーバード大学博物館)
博物館に展示される様々な種類の長石の鉱物標本とカットされた宝石質の長石(ハーバード大学博物館、ただし右奥(sodalite、方ソーダ石)と右手前(lazurite、ラズライト)は準長石であり長石ではない)

その他の希産長石

バリウムを含む長石として、重土長石(じゅうどちょうせき、セルシアン、celsian: Ba[Al2 Si2 O8])、ハイアロフェン(hyalophane: (K1-x, Bax)[Al1+xSi3-xO8])、バナルサイト(banalsite: Na[2Ba4Al4Si4O16]があり、いずれも主に変成マンガン鉱床に産する。

その他、ストロナ長石(stronalsite、ストロナルサイト: Sr[Al2 Si2 O8])、ルビクリン(rubicline: Rb[AlSi3 O8])、バディントン長石(Buddingtonite、バディントナイト、(NH4 )[AlSi3 O8])等がある。

長石の産出

上記の通り、地球の大陸地殻を構成する花崗岩類にも、海洋地殻を構成する玄武岩斑れい岩にも多量に含まれており、またその他の火成岩、堆積岩、変成岩のいずれであっても長石を含むものは多い。

一方で、長石が単体で他の鉱物をほとんど伴わない岩石として産出する場所は限られている。 カリ長石がほぼ単体で濃集するのは、花崗岩質ペグマタイトが挙げられる。ただし多くの場合、石英白雲母などほかの鉱物も伴われる。 斜長石のみが単体で集合した岩石として、灰長岩(アノーソサイト)曹長岩(アルビタイト)が挙げられる。

産業的利用

ペグマタイト鉱床にまとまった量で産出する純度の高い長石は、耐火材料やセラミックス原料として重要な資源である。

長石の中でも、ラブラドライト、ムーンストーン(玻璃長石など)、サンストーン(自然銅赤鉄鉱の微細なインクリュージョンを含む灰長石)は宝飾品によく用いられる。

関連項目

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