ダイヤモンドは高温高圧で安定な鉱物であり、地表や地殻内の普通の温度・圧力においては通常は形成されない。 地表で安定な炭素のみからなる鉱物は石墨のみである。ダイヤモンドが安定になるのは、地球内部では浅くても深さ100 km以下である。高温であるほどより深い場所でないとダイヤモンドは安定にならない(下図参照)。 ダイヤモンドが地表で見られる理由は、地下深くで形成されたダイヤモンドが石墨に相転移する間もないくらい速い冷却によって地表に達したためである(過冷却)。
ダイヤモンドと石墨の安定関係(Shirly, 2013より)。
純粋な炭素からなるダイヤモンドの色は無色透明であるが、微量成分を含むことで様々な色を呈する。
原理的には高温高圧下であれば地球内部の様々な場所でダイヤモンドは形成されるが、実際に地表まで噴出して観察されるダイヤモンドの存在する場所は限られている。 ほとんどのダイヤモンドはキンバーライトという火成岩に関連して産出する。 キンバーライトは約150 kmよりも深いマントルを構成するかんらん岩が二酸化炭素に富んだ状態において極めて低い部分溶融度で融けて生じたマグマが一気に地表へ噴出することで生じる特殊な火山岩である。 キンバーライト質マグマが噴出する火山活動は、楯状地などの古い大陸地塊が割れ始めるリフト帯に集中する。そのため、ダイヤモンドが豊富に産出する場所も楯状地に限られている。
クラトニック・リソスフェア(楯状地下のリソスフェア)でのみ、ダイヤモンドがリソスフェア(剛体として振る舞う岩石)の中で安定に存在できる。
アセノスフェアにおいてもダイヤモンドは存在しうるが、アセノスフェアは流動によってゆっくりと動き、キンバーライトに捕獲されることはめったに無いので、地表で観察されるダイヤモンドの母岩になることはまれである。
さらにダイヤモンドの母岩の組成に基づく分類として、Pタイプ(ペリドタイトタイプ=かんらん岩タイプ)とEタイプ(エクロジャイトタイプ)に分けられる。下図に示すように、65%のダイヤモンドはPタイプに分類され、かんらん岩質岩石をもともとの母岩として持っており、その大半はハルツバージャイトである。これに対してEタイプに分類されるエクロジャイト質岩石、すなわち強い変成を受けた玄武岩質岩石、を母岩として持つダイヤモンドは全体の33%とPタイプの半分程度である。残りの2%のダイヤモンドは複輝石岩(ウェーライト)を母岩としてできたものである。
また、キンバーライトの産する(あるいは産した)場所の下流にダイヤモンドが堆積物中に濃集した場所(漂砂鉱床)が存在する。 このようなダイヤモンドの漂砂鉱床は、鉱業的な採掘にも重要である。
深さ100 km以上のマントルまで沈み込み強い変成作用を受けた地殻岩石が、何らかの構造運動によって地表に戻ってきた変成岩を超高圧変成岩という。岩石名としてはエクロジャイトやグラニュライトなどとなる。超高圧変成岩の微小なダイヤモンドが含まれていることがある。
小惑星の衝突などのイベントによって、瞬間的に超高圧が実現されてダイヤモンドが生じることがあり、そのようなものが隕石の中から発見されている。隕石の中にはダイヤモンド以外にも様々な高圧鉱物が見つかっており、地球のマントルの主要構成鉱物であると考えられているもののいくつかも先に隕石中に見つかっていることがある。
従来、ダイヤモンドの見つかるのは上記のような産状だけであり、プレート沈み込み帯では絶対に存在しないと考えられていた。しかし、2008年に日本の四国中央市に産するランプロファイアの中のかんらん石捕獲結晶の中からダイヤモンドが発見された (Mizukami et al., 2008)。 このダイヤモンドはかんらん石中の二酸化炭素の流体包有物中に存在する20μm(=0.02 mm)以下の粒子である。
この他に、オフィオライト(大陸に付加した海洋プレート断片)のカンラン岩中や、第四紀の玄武岩質マグマの中など、これまでの常識ではありえない場所からのダイヤモンドの産出報告が相次いだ。 しかし、これらのダイヤモンドの大半は異様に結晶度が良いことや、人工ダイヤモンド合成時に用いる鉄ニッケル合金などによく似た組成の包有物が見つかることなどから、実験室の岩石カッターやや道路工事の際の大型カッターなどに用いられている人工ダイヤモンドが混入したものであると考えられている(Litasov et al., 2018)。
ダイヤモンドは宝石の中でも最も硬度が高く、無色透明で高い屈折率による光輝な性質から、人気のある宝石鉱物である。
また、ダイヤモンドは、その高い硬度を利用して、様々な材料の研磨や切断などに利用され、工業的に非常に重要な資源である。工業用のダイヤモンドには、人工的に合成されたものも多く用いられている。