太陽・木星・月の質量を求める

(問題)
太陽、木星、月の質量を求める原理を考えて説明せよ。
ただし、ロケットや探査機などの宇宙技術は用いないで地球からの観測で求められる方法に限る。また、対象とする天体の半径や公転周期は観測により求められるものとする。

(ポイント)
 資料集などには天体の大きさや質量が一覧になって載っていますが、ここでは簡単化した方法でそれらを地表からの観測と力学的な考察で求める方法で推定することを考えます。
こういった推定の問題は、出題者の意図によって解答がまちまちですから、しっかりと講義を聞いて手法を学ぶことが重要になります。
ここではあくまで参考としての一例を挙げますが、ほかにも手法や近似方法はたくさんあるでしょう。

(解答)
 自らの周りを他の天体が周回しているような天体、(惑星を持つ星、衛星を持つ惑星など)の質量は、天体の大きさ(半径)とその天体の周りを周回する天体の周回の周期が分かればケプラーの第3法則により求めることができる。
 この問題の中では太陽と木星がこれに当てはまる。以下、その求め方を論ずる。
 

 

 ケプラーの第3法則は「惑星が太陽の周りを周回する周期の2乗は楕円軌道の半長弦の3乗に比例する」というものである。
 ケプラーの第1法則「惑星の運動は位置平面内で起こり、その軌道は太陽を焦点の一つとする楕円軌道を描く」、ケプラーの第2法則「太陽と惑星を結ぶ直線が単位時間に装荷する面積(面積速度)は一定である」を用いて、これを物理学的に解釈すると、

惑星物理基礎 太陽・木星・月の質量の求め方

よって、天体観測によりTを求め、さらに惑星と星の間の距離が観測により分かるので、その惑星の質量を求めることができる。また、衛星を持つ惑星ならば、惑星と衛星の間の距離と衛星の周期を観測によって知ることができれば、この方法と同様にしてその惑星の質量を求めることができる。
実際に数値を代入して質量を求める。
G=6.67×10-11m3 kg-1 s-2
(太陽と地球の距離)=1.5×1011 m、
T(地球の公転周期)=1年=3.15×107 s、
π=3.14
とすると、太陽の質量はM=2.01×1030 kgと求まる。

同様にして、木星の場合は最大の衛星ガニメデを用いて、
T(ガニメデの公転周期)=7.155日=6.18×105 s、 (ガニメデの公転半径)=1.07×109 mといった観測からの数値より、木星の質量mは
 m=1.89×1027 kg
と求まる。

このようにして太陽と木星の質量を求めることはできる。しかし、月の周りを回る天体はないため、望遠鏡による天体観測と計算によるこの方法は使うことができない。
人工的に月の周りを周回する人工衛星を打ち上げ、その運動の様子からこの方法を用いて計算することはできる。

そこで別の方法を考えると、月の質量は地球・月系の共通重心を求めれば、月の質量を求めることができる。理論的には太陽や木星の質量もこの方法でも求められるが、太陽とその他の惑星の質量の大きさの差があまりにも大きいため精度が落ちると考えられる。地球と月は大きさが1/4程度しか違わないため、質量の違いも太陽と惑星ほど大きくはないと考えられる。
具体的には以下のようにして求める。

惑星物理基礎 太陽・木星・月の質量の求め方

惑星物理基礎 太陽・木星・月の質量の求め方

※今回この解答で求めた太陽と木星の質量は、教科書などに乗っている数値と比較しても精度が高いが、月の質量はそれらに比べるとやや制度が劣る。3つともケプラーの第3法則を用いるが、月だけはさらに共通重心に関連してもう1回分計算をしなければならず、そこで誤差が増大してしまうのだと考えられる。

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