埼玉県日高市大宮鉱山のマンガン鉱物

Manganese ores in Omiya Mine, Hidaka City, Saitama, Japan

2012/05/05

大宮鉱山の概要

大宮鉱山(おおみやこうざん)は、またの名を日高鉱山(ひだかこうざん)とも呼ばれ、高麗神社の裏にあるマンガン鉱を産した鉱山です。
大宮鉱山の出鉱実績はこの地域で1番だったそうです。場所はこの地域では有名な高麗神社のすぐ近くで、JR高麗川駅から徒歩20分程度と、アクセスも良い産地です。
鉱物産地としては大変珍しいことに、Google mapに産地の場所がリンクされています。https://goo.gl/maps/t79PMzNLKt42
そのため、鉱物採集の初心者でも迷うこと無く産地にたどり着くことのでき、とても良い入門的な鉱物産地の1つであると言えます。
地質学的には、大宮鉱山は秩父帯の付加体中にあるチャートに含まれていた深海マンガン堆積物が変成してできたマンガン鉱床で、関東山地付近一帯の他のマンガン鉱山と同様のものです。

採集までの様子

まずは採集の起点となるJR八高線の高麗川駅の様子から。

JR高麗川駅_大宮鉱山鉱物採集

↓あんまりなにもない駅ですが、駅前には数学的な(?笑)オブジェがある。コンビニとかはないので、鉱物採集に行くならランチはどこかで買って持っていったほうが良いでしょう。

JR高麗川駅駅前の様子_大宮鉱山鉱物採集

↓JR駅構内の高麗川駅周辺の名所案内看板(左)と街中に立つ高麗神社への看板(右)。
この辺り一帯では、高麗神社が有名なスポットだそうで、駅を出てからもそこら中に看板や案内が出ていますので、JR高麗川駅から大宮鉱山に行くにはそれに従って進めば間違うことはありません。

JR高麗川駅高麗神社案内看板_大宮鉱山鉱物採集
高麗神社案内看板_大宮鉱山鉱物採集

↓高麗神社の様子。駐車場の一部は、自動車のお祓いをするための場所になっており、クルマごと結界(?)に入れるようになっていました。こんなの初めて見ましたねw

高麗神社_大宮鉱山鉱物採集
高麗神社_大宮鉱山鉱物採集

↓高麗神社の脇へ入り、そこにある沢沿いに100m弱くらい上流へ向かう。
この沢沿いの未知に既に多数のマンガン鉱石が落ちていて採集可能である。足元を見ると二酸化マンガンで真っ黒である。
しかし、この道自体がかなりぬかるんでいるので、長靴か何かを持っていくことを推奨します。

埼玉県日高市大宮鉱山(日高鉱山)でのマンガン鉱物採集-ズリはかなりぬかるんでいるので、長靴か何かを持っていくことを推奨します。

↓沢沿いの道を抜けると少し開けた場所に出る。
ここにそれなりの量のマンガン鉱石が集積されているので、主にここから鉱物採集を行った。

埼玉県日高市大宮鉱山(日高鉱山)でのマンガン鉱物採集

↓更に上流へは沢筋が2股に別れる。
どちらに進んでも幾つかの坑道が開いていた。
坑道近くにもややマンガン鉱石があるが、ヤブに覆われていることと、かなりぬかるんでいることとで採集効率は極めて悪い。
やはり、上の写真の開けた場所がもっとも採集しやすいようである。

埼玉県日高市大宮鉱山(日高鉱山)でのマンガン鉱物採集
埼玉県日高市大宮鉱山(日高鉱山)でのマンガン鉱物採集

↓針状の不明鉱物。この産地ではしばしば見られるが正体不明。
加藤昭先生にも質問したのですが、分析しても"結晶度の低い菱マンガン鉱"くらいしかわからないのだそうです。何らかの鉱物を置換してしまっているらしい。

埼玉県日高市大宮鉱山(日高鉱山)でのマンガン鉱物採集

てか、指が二酸化マンガンで真っ黒ですね…w お見苦しい写真で申し訳ない。
マンガン鉱山での鉱物採集をしていると、どうしてもこうなってしまいます。指ならいいのですが、服やリュックなどの布に二酸化マンガンの黒い汚れつくと落とすのが極めて困難になるので、気をつけてくださいね。

↓いわゆるカリオピライトCaryopiliteを主体としたマンガン鉱石(左)とバラ輝石Rhodonite(右)
左のような感じの鉱石が多数見られます。
なかには透明感を持ったビール瓶の破片のような茶色い純度の高い(?)カリオピライトもある。
バラ輝石は探せばそれなりに綺麗なピンク色のものが見つかる。

埼玉県日高市大宮鉱山(日高鉱山)でのマンガン鉱物採集

↓石英と共に産する茶色針状鉱物。はじめはこれは何なのかわかりませんでした。

埼玉県日高市大宮鉱山(日高鉱山)でのマンガン鉱物採集

そこで、大学で粉末X線回折を行ったところ、ガノフィル石Ganophylliteであることが明らかになりました。ガノフィル石はMnとNaを含む粘土鉱物です。

↓得られた粉末X線回折のピークパターン。粘土鉱物のため低角にピークが現れます。
粘土鉱物は水を含むため、イオン半径の大きな酸素を沢山持った鉱物となります。(一般に、クーロン引力を考えれば負に帯電した陰イオンは、正に帯電した陽イオンより原子核からの引力の働きが弱まって電子が広々と動きまわることになりますので、はるかにイオン半径が大きくなります。)
これをブラッグの条件λ=d sin2θを考えると、イオン半径の大きな元素をたくさん含む鉱物は格子面間隔dが大きくなりますから、入射するX線の波長λ一定のもとで測定を行うと、当然、2θの値は小さなものとなります。

Ganophylliteガノフィル石鉱物採集同定粉末X線回折

以下に、ピークサーチの結果も載せておきます。
最強線以外にもいくつか当てはまる線が見られます。石英Quartzのコンタミも確認できます。

No. 2θ[deg] d[A] 相対高さ(a.u.)
1 7.062(3) 12.508(5) 100.00
2 14.14(2) 6.260(9) 3.66
3 21.259(19) 4.176(4) 3.25
4 24.14(2) 3.684(3) 2.04
5 26.655(10) 3.3416(12) 5.96
6 28.432(14) 3.1367(15) 3.22
7 31.381(5) 2.8483(4) 5.03
8 32.156(19) 2.7814(16) 1.54
9 33.99(4) 2.635(3) 1.52
10 37.58(6) 2.391(4) 1.05
11 41.45(7) 2.177(3) 0.95
12 56.45(2) 1.6288(6) 1.01

ガノフィル石のピークはこちらをご覧ください。(American Mineralogist Crystal Structure databaseのサイトより)

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