糸魚川ジオパーク ヒスイ関連施設めぐりの旅

訪問日 2015年11月7日


フォッサマグナミュージアム その2

フォッサマグナミュージアム1の記事で紹介した博物館入口付近や第1展示室の展示に引き続き、さらにフォッサマグナミュージアムの魅力を紹介します。

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

第一展示室が見た目の美しさ重視のヒスイの展示だったのに対して、第2展示室では地球科学的な意義を重視したヒスイ輝石やそれと関連する鉱物・岩石の展示が中心になっています。 写真はヒスイ輝石岩の圧砕などの変形構造が観察できるスライスや円レキの展示です。蛇紋岩メランジュの上昇によって捕獲されたヒスイ輝石岩の様子が見て取れます。 右の写真の左端には黒色ヒスイも写ってますね。

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

↑ 風化した表面のせいでおよそ全く美しくない岩石で、一般の人なら見向きもしないかもしれませんが、圧砕されて蛇紋岩に捕獲されたヒスイ輝石の様子です。 やわらかい蛇紋岩が選択的に風化しているのでヒスイ輝石の部分が浮き出ており、より一層美しくなさを強調してますが、地球科学的には重要なサンプルでこういうものが展示されているのは博物館ならではですね。

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

↑ 蛇紋岩とヒスイ輝石のコンタクト部分では流体などの作用で変成/変質が起き、この写真の標本のように角閃石類が生じることが多いのですが、このように立派な繊維状結晶の集合になっているものは珍しいでしょう。

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

↑おそらく日本で一番有名なコスモクロア輝石の標本ですね。 素晴らしく美しい濃い緑色の標本です。コスモクロア輝石はヒスイ輝石NaAlSi2O6のアルミニウムAlがクロムCrに置換した端成分に相当し、もともと1965年に鉄隕石から発見されたため、コスモクロア輝石"=宇宙緑輝石"と 名付けられました(Frondel & Klein, 1965 Science)。その後、ミャンマーや日本の岡山県大佐山、そしてここ糸魚川でも産出が確認されました。
図鑑この標本の写真が載せられる時は切断研磨した面を真上から撮影した写真ばかりですが、ここフォッサマグナミュージアムに来れば、横から転石の地の部分も眺めることができます。 案外平べったい石だったんですね。もっと丸っこいものかと思ってました。

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

↑ヒスイ輝石と他の造岩鉱物(石英、方解石、長石など…)の比重を持って比べるという展示。もちろん、持ってわかるほどの重さの違いはないです。 ヒスイ輝石の野外鑑定のポイントで、「ヒスイ輝石は重い」というものがあるので、きっとこういう展示ができたのでしょうが… 鉱物単体の比重ではなくて、岩石組織としてヒスイ輝石岩は細かい結晶が緻密になっていて空隙が少ないから全体として重い、ということなはずだと思うのですが… やはり持ってもそんな違いはわからないですw

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

↑ 鉱物学的・岩石学的なヒスイ輝石岩の説明。ヒスイ輝石岩から記載された新鉱物の数々、ヒスイ輝石岩の熱水生成説、ジルコン年代測定まで、さまざまな2015年時点での 最新研究成果というべき事柄が書き並べてあり充実しています。

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

改装したてということもあって、プレート沈み込み帯の展示解説はもちろん、 糸魚川のヒスイ輝石岩の露出に欠かせない蛇紋岩メランジュに関する解説も最新の研究に基づいて充実した解説になっていました。

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

↑フォッサマグナの命名者であり日本の地質学の基礎を築いたナウマンの功績についても展示されています。一角が明治時代のレトロ感を出したような展示になっています。

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

↑ヒスイ輝石ばかり見ていてその後は時間切れで流してしまいましたが、糸魚川の姫川流域などで見られる青海石灰岩からは古生代のフズリナ・四射サンゴ・腕足類・三葉虫・コケムシ・頭足類・二枚貝・巻貝などの多様な化石が見られ、 その展示も極めて充実しています。化石好きな方はそちらを中心に見学したらたのしめるかと思います。

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

その他、地域の教育施設として、日本列島形成のテクトニクスに関する展示、一般的な化石標本による地球生命史の展示、国内外の様々な鉱物標本の展示など、 スタンダードな地球科学の展示もそこそこ充実しています。

糸魚川ジオパーク ヒスイ輝石 フォッサマグナミュージアムの展示

ヒスイ輝石関連にフォーカスしてフォッサマグナミュージアムを紹介しましたが、全体として大変充実した展示です。 恐竜の化石のような「客寄せパンダ展示」がないので一般ウケする要素としては宝石としてはあまり華美とは言いがたい「宝玉ヒスイ」で、観光地としては地味かもしれませんし、 観光情報サイトのレビューではそういう書き込みもやや目立ちます。しかし日本を代表するジオパークの中心施設として、フォッサマグナミュージアムは今後も日本の地球科学博物館のお手本のような 充実した現在の展示スタイルを今後も貫いて欲しいと思います。とても楽しめた見学でした。


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