中古ガイガーカウンターで放射性鉱物の放射線を測ってみた
1.機械の概要
2.花崗岩(茨城県稲田石)
3.ジルコンzircon(ドイツ)
4.褐簾石Allanite(フランス)
5.河辺石Kobeite(広島)
6.方トリウム石Thorianite(マダガスカルMadagascar)
7.ウラン鉱石(茨城県雪入&鳥取県人形峠)
8.まとめ
1.機械の概要
福島第一原発の事故以来、ガイガーカウンターという言葉を知らない日本人はいなくなりましたが、私は原発事故の2ヶ月前にガイガーカウンターを購入していました。 目的はもちろん原発事故と関係なく、鉱物採集のためです。 CDV-700という冷戦時代の"名機"。黄色い箱が目印で、少し年配の冷戦当時を知っている方なら見覚えがあることでしょう。
私の買った中古のCDV-700の価格は格安の1万円、テキサス州の保健所が使っていた中古品を鉱物標本業者を通じて買ったものです。
20年近く前の古いものなので、感度も動作もビミョー、数値の信頼度は極めて低いため原発事故対応には使えるものではありませんが、
鉱物採集にはこれくらい鈍感なほうが良いといいます。高価なものでは感度が良すぎて、花崗岩質ペグマタイトの山に行くと山のどこでも反応してしまって、目当ての鉱物が探せないからです。
もちろん、フィールドで壊れる可能性もあるからやっぱり安いほうがいい。
メーターの単位はmr/hr(ミリレントゲン毎時)なので、これを流行のSv/h(シーベルト毎時)に換算するには、0.1mr/hr=0.87μSv/hという計算をする。
ツマミの部分でOFFと×1,×10,×100の強度調節ができます。小学校・中学校の電流計の操作が思い出される。
ここがガイガーミュラー検出管(GM管)と呼ばれる、放射線を感知する部分。ここが破れてしまうと使い物にならなくなる。
CDV-700は持ち運びにも便利な形です。
CDV-700の取扱説明書に回路図もついていた。古き良き単純明快な回路、だそうです(工学部の友人談)。
2.花崗岩(茨城県稲田)
まずはごく普通の花崗岩から放射線量測定。花崗岩の石材産地として有名な茨城県稲田で採集したものです。 線量を示す数値は多少しか上がりません。
3. ジルコンzircon(ドイツ)
ペグマタイトに産するごく一般的なジルコンの結晶。大きさは2cmほど。
純粋なジルコンは放射能を持たないが、ジルコニウムの一部がウランやトリウムに置き換えられていることが普通であるため造岩鉱物の中では放射能が高い。
思いの外、線量が出ましたね。
4.褐簾石Allanite(フランス)
次はフランスの褐簾石。左上の茶色い結晶がそれです。
褐簾石自体は放射性元素を含みませんが、これもまた副成分として放射性元素を持ちます。
白い母岩は苦灰岩です。
でもそんなに高くはないみたいですね。まぁこんなものでしょう。
5.河辺石Kobeite(広島)
河辺石は日本新産鉱物で、ウランとイットリウム、そして稀元素のニオブを含む放射性の酸化鉱物です。赤い矢印の先にチョコっと付いている。
周りの母岩はカリ長石で、本来は白い鉱物ですが放射線によるカラーセンターによりピンクを帯びた色になることが普通です。
河辺石部分の拡大。黒くテカリのある針状結晶。河辺石周辺の長石は特によく「焼けている」様子が見えます。
しかし、測ってみると河辺石の線量はあまり高く出ませんでした。
6. 方トリウム石Thorianite(マダガスカルMadagascar)
地球の天然3大放射性元素は、ウランU、カリウムK44、そしてトリウムThです。 そのうちトリウムの代表的な鉱物としてこの方トリウム石があります。
小さな結晶だからか、3大放射性元素とはいえ、大した放射線は出ませんでした。
7. ウラン鉱石(茨城県雪入&鳥取県人形峠)
茨城県雪入のペグマタイト。少しだけですが鮮やかな緑色鱗片状の燐銅ウラン石Torberniteがついています。 しかし普通の花崗岩と同じくらいしか反応しませんでした。 ウラン自体はとてもありふれた元素なのです。
次に鳥取県人形峠の燐灰ウラン石autuniteを測ってみた。
人形峠の燐灰ウラン石autuniteさすがはウラン、結構線量出ます。
それでもこの程度です。石全体がウランなのではなく、ウラン部分は実際は肉眼的直感よりもかなり「少し」だけのようです。
燐灰ウラン石といえども30cm離すともうほとんどわからなくなる。
今度は、ビニール袋に入っているのは人形峠の堆積岩から出た炭化木。
ウランは酸化的な環境で水に溶け、還元的な状態で沈殿するので、炭化木のような有機物があるとかなり吸着し、強い放射線量を示します。
測ってみると……いただきましたー!元気なレンジオーバーです!
ということで、ここではじめてレンジのツマミを切り替える
レンジの大きさを1つ変えて測った所、このくらいに。
8.まとめ
さいごに全員集合して記念測定.
計測管を30cmも離すと、全部あわせてもこの程度にしかなりません。いくらウランやトリウムの化合物でも、点源では距離の3乗に反比例してその線量は減ってしまうのです。 まして言えば、放射性鉱物を持っていても空間線量には全く影響しないといえるでしょう。
最後にもう一度言いますが、この計測器、かなりブレが大きいのでこの程度の微弱な放射線では定性的にしかわかりません。 つまみが×100まであるところを見ると、もっともっと強い放射線を測るものなのでしょう。