埼玉県東秩父村朝日根のパンペリー石

訪問日 2008.2.1.



 
埼玉県の朝日根はパンペリー石が産する産地として有名ですが、パンペリー石自体が地味な見た目であるため、この産地に関する情報はネットではあまり出ていません。

 書籍では、日本鉱物倶楽部の『地球の宝探し 全国鉱物採集ガイド』に詳しく載っていますが、私が友人の鮪川氏(仮名!?)と行ったときには産地の様子が多少変わっていたので、報告させていただきます。しかし、この本のは使えますので出かける前に一度見ておくことを進めます。

 産地までは、東武東上線やJR八高線の小川町駅からバスが出ています。1時間に一本くらいあります。

 降りるバス停は皆谷(かいや)です。『地球の宝探し』では新田となっていますが、皆谷の方がいいです。バス停の近くには自販機や公衆トイレもあります。

 皆谷バス停で降りたら、早速適当なところから河原に下り、上流に向かって歩きます。河原の転石には、石灰岩やチャート、砂岩といった一般的な付加体の岩石に混ざって、玄武岩・変ハンレイ岩・緑泥片岩・蛇紋岩といった塩基性岩があります。目的の鉱物はこれらの岩石の中にあります。

 少し行くと、橋が2つあります。下をくぐって先に進むと、そのあたりから緑黒色〜灰黒色の変斑レイ岩転石の中に曹長石の脈が入っているのが見られます。部分的に晶洞もあり、その中には一目で長石と分るような結晶も採集できます。

 更に進むと、同じような岩石の中に灰緑色・繊維状のパンペリー石の脈が入っている転石が見られます。かなり大きい転石ですので、大きめのハンマーやタガネが必要になります。ちなみに、よく似た見た目の脈に、もっと普通の鉱物である緑レン石がありますが、こちらはもっと明るい黄緑色です。ちなみに、図鑑などには数センチの太いパンペリー石の脈が載っていますが、採集できるのはせいぜい5ミリ〜10ミリくらいでしょう。でも、石の数は結構あります。

パンペリー石
↑採集したパンペリー石 緑色の脈の部分

パンペリー石 
↑上のパンペリー石の拡大写真

更に進むためには、途中で道に上がらないと上流に進めないところもありますが、カンタンに道と川の間は行き来できる場所は多々あるので心配要りません。何度か、道と河原を行ったりきたりしますが、まぁたいしたことは無いでしょう。

 そんなこんなで、ダムのところまで来るとパンぺリー石や曹長石などの転石のもとになっている岩石の露頭があります。岩石は変斑レイ岩や変玄武岩などです。しかし、この露頭からの採集は難しいでしょう。このあたりの転石に、曹長石の自形結晶の上質なものは見られます。パンペリー石は先ほどの橋の少し上流の当たりが良いようです。

 私たちは2月に行きましたが、日当たりがいいので冬でも風の無い晴れた日なら問題なく採集ができます。逆に夏場は川の水かさが増えて、採集ができなくなるので注意してください。

                             ↑至 落合・小川町駅
朝日根の鉱物産地


ペイントで手書きのためかなりアバウトですが・・・ 上が北です。

上の方にある○にTを逆にしたようなのがついているのが、皆谷バス停です。 左下の「ダム」のところの下流側両岸にパンペリー石などを含む露頭があります。赤い点々がついているところらへんから、パンペリー石・曹長石の転石中のものが採集できます、が、アバウトなので・・・まあこの辺の河原を適当に歩いてみてください。大雨とかで岩の位置もだいぶ変わるかと思いますしね。。。

この産地にはパンペリー石も曹長石もまだかなりの量が産するようです。(オンファス輝石は見当たらなかったなぁ・・・) 絶産の心配はありませんが、荒らしは近隣の住民や他の採集人の迷惑ですので絶対にやめましょう。ちなみに、上記の地図がアバウトすぎとよくわからないときは、Googleとヤフーの地図の両方を見てみると便利だったりします。

 

 

 

〜付加体中の塩基性岩〜

 鉱物採集を離れて少し学術的なことも見てみましょう。

さて、日本列島が付加体の集合であることは今日の地質学的には有名なことです。

付加体について知らない方は、『日本列島の誕生』 平朝彦・著 岩波新書 を読まれることを薦めます。まあネットで検索すれば、ちゃんと解説は出てくるとは思いますが・・・

 その付加体の中には、点々と玄武岩・斑レイ岩・蛇紋岩などの塩基性岩が産出します。その様子は地質調査所発行の地質図の日本全国版を見ると分るかと思います。このような場所は鉱物採集の産地として有名なものも多いかと思います。

 普通に付加体について考えるとこれらの岩石が含まれるにはホットスポットの海山の名残かと思われます。私も最初はそう思っていました。しかし、地質図で見ると分るように、塩基性岩は横に一列になって付加体中に産します。ホットスポットで説明するのは難しいでしょう。

 そんな中、発見されたのがプチスポットでした。これは、プレートが海溝に沈み込む際に割れ目が生じ、そこから上部マントルの溶融によってマグマが発生して、海山ができるというものです。いままで、マグマの発生する場所は「中央海嶺・海溝・ホットスポット」の3つといわれてきましたが、このプチスポットの発見によりマグマ発生の場所が4つということになり、最近では既に子供向けの図鑑でもこのプチスポットが取り上げられているそうです。

 プチスポットの研究をなさっている平野直人さんのページです。研究内容以外のエッセイみたいなのもも面白いです。

 プチスポットは日本などのプレート沈み込み帯の地質を考えるのに重要なばかりか、海底においては、古いプチスポット部分は、海洋プレートの「ひび割れ」部分に相当するわけですから、地震の発生などにも影響を与えると考えられています。

 この朝日根でも赤色チャート層に緑色の玄武岩が後から貫入したと見られる露頭を観察することができます。おそらくプチスポットによるものでしょう。

 まあ、そんなこんなで地球の営みに思いを馳せながら、パンペリー石を探してください (^_^);

 

 

パンペリー石 PumpellyiteーAL 

 Ca8(Al,Mg)4Al8Si12(O,OH)56

 晶癖:針状

 集合:時に放射状のようになる

 へき開:1方向

 硬度:6.5

 比重:3.5

 単斜晶系



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