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島根県浜田市の周防帯(三郡変成帯)&黄長石霞石玄武岩

訪問日 2012年8月11日

○概説
・日本海とアルカリ火成岩
 日本海岸沿いにはアルカリ火成岩という、NaやKに富みSiに乏しい火成岩が広く産出している。これは日本海が拡大する際に、大陸プレートの割れる活動の一環として噴出したものであると考えられており、規模の大きなものだと現在の地球上では東アフリカ大地溝帯やアメリカ西海岸のBasin and Range Prvince(ベーズン&レンジ地帯)がこれと同じような活動に該当する。日本で普通に見られる火成岩は、沈み込んだ海洋プレートから供給される水が部分溶融に大きな影響を与えているが、大陸プレートの割れるような火成活動の際にNaやKが富むのは、流体として水以外に二酸化炭素が部分溶融に大きな影響を与えるからであると考えられる。二酸化炭素は酸性なので、アルカリ金属と親和性が高いからである。
 もっとも、日本における火成岩は海洋プレート沈み込みによるSiに富む火成岩が圧倒的に多く、アルカリ火成岩は稀である。その中で、島根県浜田市にの黄長石霞石玄武岩は特に有名で、アルカリ火成岩に特有に産する鉱物が見られることから、鉱物採集の産地としても知られる。

・周防帯
 近畿北部~山陰地方~九州中北部といった日本海側に産する結晶片岩を中心とした低温高圧型の変成帯は、都城秋穂による熱力学的考察から生まれた「対の変成帯」の概念に当てはめて、「高圧型の三郡変成帯+低圧型の飛騨外縁帯」という見方があった。(都城・久城,1977)
 しかし、この三郡変成帯として1つにくくられた変成帯は後の研究により、現在では周防帯と蓮華帯という2つの変成帯に分けられるという見方が主流である。
蓮華帯は、九州北部から山口県西部の長門構造体と山陰海岸を経て飛騨外縁帯に広がる330~280Ma(石炭紀)の結晶片岩を主とし、超塩基性岩、変斑レイ岩、角閃岩などを伴う日本で最も古期の高圧型変成帯である。いわゆる三郡変成帯の北縁部にあたる。
周防帯は、いわゆる三郡変成帯の大部分を占め、主に九州中北部~中国地方を経て近畿西端部に広がる230~160Ma(三畳紀~ジュラ紀)の結晶片岩を主とし、超苦鉄質岩や変斑レイ岩などを伴う高圧型の変成帯である。その南西延長は長崎県の野茂半島を経て琉球列島南西端の石垣島-西表島に達している。原岩はペルム紀末~トリアス紀前半の付加体であると考えられている。
 
 今回観察したのは、周防帯の砂質片岩である。

島根県浜田付近の地質図
↑浜田付近の地質図。産総研の20万分の1シームレス地質図より引用。
今回観察した三郡変成帯は左下に広がる黄土色の部分、アルカリ火成岩は塚ケ原山付近の薄緑色の部分である。 
島根県浜田の地質見学と鉱物採集ジオパークジオサイト
↑今回訪れたフィールドの地形図。A地点、B地点は以下の解説に対応する。

(1) A地点
 川の河川敷に駐車し、ひとまず川沿いに歩いてみたところ、三郡変成帯の結晶片岩しか見られなかった。結晶片岩はほとんどが泥質片岩と見られるなめらかな岩石であったが、一部には石英質の片岩が見られたり、黄鉄鉱などの若干の金属鉱物を伴う石英脈があったりもした。
島根県浜田の地質見学と鉱物採集ジオパークジオサイト_三郡変成帯 島根県浜田の地質見学と鉱物採集ジオパークジオサイト_三郡変成帯
↑露頭の様子と、少し岩石を露出させた部分の様子

島根県浜田の地質見学と鉱物採集ジオパークジオサイト_三郡変成帯の結晶片岩
↑露頭から採集した泥質片岩の標本。石英粒がほとんどを占めているようだが、絹雲母の影響と考えられるなめらかな触り心地を持つ。

(2) B地点
 少し北側のゴルフ場のある丘陵の南沿いの道へ行ったところ、転々と黒色の玄武岩質の転石が見られた。
島根県浜田の地質見学と鉱物採集ジオパークジオサイト_アルカリ玄武岩 島根県浜田の地質見学と鉱物採集ジオパークジオサイト_アルカリ玄武岩
↑転石の様子と、それを少し割って新鮮な面を出した様子。
この付近の黄長石霞石玄武岩(アルカリ玄武岩)は黒色でほぼ均質な岩石である。名前についている黄長石や霞石などの鉱物はいずれも顕微的なもので、薄片を作成して偏光顕微鏡を用いないと確認できず、肉眼やルーペでの観察はできない。

島根県浜田の地質見学と鉱物採集ジオパークジオサイト_アルカリ玄武岩
↑露頭の新鮮な部分のアップ。
まれに空壁があり、沸石類Zeolite groupなどが見られる。また、露頭表面付近では、このような空壁に褐鉄鉱Goethiteや菱鉄鉱Sideriteなどが二次的に生成している。

以下、空壁に産した褐鉄鉱Goethiteと菱鉄鉱Sideriteなどの炭酸塩鉱物と見られるものの様子。
白色鉱物の一部はゼオライト類だろうか?
島根県浜田の地質見学と鉱物採集ジオパークジオサイト_アルカリ玄武岩 島根県浜田の地質見学と鉱物採集ジオパークジオサイト_アルカリ玄武岩
島根県浜田の地質見学と鉱物採集ジオパークジオサイト_アルカリ玄武岩 島根県浜田の地質見学と鉱物採集ジオパークジオサイト_アルカリ玄武岩

 炎天下の中の観察・採集であったので、長居はできなかったがある程度の鉱物を観察することができた。立派な沸石類の結晶を掘り当てるとなると相当な努力が必要になるだろう。
 また、アルカリ火成岩の割れ口はガラスの割れ口のように鋭く尖る事が多いので、ハンマーで割砕く際には必ず軍手と保護眼鏡をすることを強くオススメします。炎天下の中のでの装備は辛いかもしれませんが、これを怠ると炎天下の中ので手が細かい傷で血だらけになってしまいます(^^;)

午後の益田市都茂鉱山

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