2016 東京都奥多摩町白丸鉱山の鉱物採集と周辺地質
Mineral collecting and geological observation of Shiromaru Mine, Tokyo
採集の概要
白丸鉱山は東京都奥多摩町白丸の多摩川河岸にかつてあったマンガン鉱山です。 2015年12月、白丸ダムが12年ぶりに放水し、湖底から白丸鉱山が顔を出しました。 2016年2月8日に白丸ダムの水門が閉鎖するまでの約2ヶ月の間、鉱物愛好家のみんなで大いに盛り上がりました。
フィールドノート
2016年放水時の東京都白丸ダム。ダム湖側からの写真。
2016年放水時の東京都白丸ダム。工事看板。
白丸鉱山"赤壁"の全景。
"赤壁"に取り付いて戦闘を行う鉱物コレクター各位。
赤壁のアップ。特に赤い部位。こういう場所で多摩石や東京石が産するらしい。
赤壁のマースター石。
上のマースター石の標本の裏側。細いベニト石の脈が付いている。
白丸鉱山のベニト石の蛍光。上が可視光で撮影したもの、下が短波紫外線で撮影したもの。
赤壁の反対側(東側)の壁面は海溝堆積物のタービダイト質砂岩の露頭が広がる。この砂岩中には縦横に斜行する幾つかの脈が入っており、脈中に重土十字沸石の自形結晶が産する。
赤壁を含む黒色チャートブロック上端と見かけ上位の砂岩との境界を成す逆断層。断層面にはシアーされた断層粘土起源のような頁岩があります。
赤壁の上に乗って、裏側を観察する。黒色頁岩〜黒色チャートといった貧酸素海洋環境を示唆する遠洋深海堆積物からなります。 これらの岩石は向斜を成していることが見て取れますが、赤壁のマンガン鉱床とこの向斜の間には断層が入っています。 従って、残念ながら裏側にさらに同じ層順のマンガン鉱床が続いていることはなさそうです。
赤壁から黒色チャートへの遷移の様子。幅約2mの中で赤壁マンガン鉱床→紫色チャート→灰色チャート→黒色チャートおよび黒色頁岩、という順序で徐々に岩石が変化している様子が観察できます。
赤壁を超えて、多摩川沿いに上流側(西側)へ歩いてみました。雪の残る中、日の差さない渓谷を冷たい風が吹き渡っていてなかなか厳しい地質観察でしたね。
ひたすら黒色層状チャートが続きます。プレート沈み込み帯で圧縮されて底角逆断層やしゅう曲などにより同じ層順が繰り返している典型的な付加体地質が観察できます。