Wyoming Craton, Snowy Range Supergroup Quartzite
アメリカ合衆国ワイオミング州 原生代スノーウィーレンジ累層群のクォーツアイト
訪問日: 2013年11月
アメリカ地質学会の年1回の学会であるGSA annual meetingがコロラド州の州都デンバーDenverで開かれるついでということで、
ジルコン年代分析のサンプル用にワイオミング州南部のSnowy Range Supergroupスノーウィーレンジ累層群のオルソクォーツアイトを採集してきました。
30億~25億年前くらいの太古代の花崗岩・片麻岩類の基盤の上に発達した原生代の受動的大陸縁辺の堆積層です。
オルソクォーツアイトは原生代(約25~5.4億年前)などの古い時代の受動的大陸縁辺に特徴的な
ほとんど石英からなる砂岩(一部礫岩)が長い時間のなかでじっくりと熱作用を受けてできた堆積岩で、もはや変成岩のようになったものです。
28~25億年前の同じ時代の、同様な堆積層は北米のカナダまでにかけての地域のみならず、世界中の太古代クラトンの上に見られます。
オルソクォーツアイトなどとは言わずに、普通にクォーツアイトというと、大抵の場合このような岩石のことを指します。
あるいはもう、砂岩としてそのまま扱ってしまうことも普通です。岩石名というのは時と場合によって使い分けられるものなのです。
オルソクォーツアイトは日本語で正珪岩とも言われますが(今現在では殆ど言われません)、
日本国内のようなプレート沈み込み帯である活動的大陸縁辺でできた堆積帯ではこのような岩石は見られません。
(ただし、ごく一部、北中国クラトンからの礫を含む古い礫岩中に見られることがあります。)
クォーツアイト(珪岩)というのが日本国内ではしばしば見られますが、これらはチャートが花崗岩などの火成岩貫入による
接触変成作用によってできた岩石で、本質的に全く別の岩石です。
成田からの直行便でデンバーへ。
デンバー着陸直前、ワイオミング州南部のロッキー山脈の山々を撮影。
ロッキー山脈はしばしば環太平洋地域の沈み込み帯による造山帯の結果できたものであると勘違いされていますが、
これは直下にマントルの上昇流が存在することによって地殻が浮力を得て盛り上がってできた山脈です。
いずれ東アフリカ地溝帯のような、大陸の割れ目へと成長していくと予想されています。
デンバーの街の様子。小さな街ですが、ミニ丸の内かのような感じで小綺麗に発展しています。治安が悪いという感じもしませんでしたし、良い街です。
学会会場となった、コロラドコンベンションセンター。名物の青い熊です。
日本の学会からは想像できないくらい広大な会場で、様々な学会やイベントの会場としてとても有名な場所のようです。
私達がGSAに参加した1ヶ月位後、スパコンの学会があったらしく、同じ会場で京だのTSUBAMEだのの宣伝をしている様子の画像が
Twitterで流れてきました。
私はサンプリングのためにアメリカへ行っただけで、先輩たちの学会発表やその他気になる研究者の発表を見学してきました。 そしてその後デンバーから北上してワイオミング州へサンプリングに!!
標高3000mを越す高山を縦貫するハイウェイ状の道があり(その名もSnowy Range Pass)、その道路沿いに切り通して出来ている露頭でサンプリングをしました。
雪で道路閉鎖のおそれもありましたが、数日前から晴れの天気が続き、一度は凍った路面が溶けてくれたおかげで何とか採集は無事に出来ました。
クォーツアイトの露頭とサンプル採集の様子。氷点下10°Cくらいの気温で、長靴が雪に埋まりながらのサンプル採集となりました…
ジルコン年代分析用にビニール袋一杯に6ヶ所採るだけだったので、道路脇の露頭でササッと逃げるようにして採集して帰ってきました。
無事にサンプリングが終わって小高い場所から撮影。
いやもう、とても寒くて寒くて… 手が霜焼けてしまいました。
山の上は雪なのですが、下に降りるとカラッと晴れた荒野が広がっており、雪はまったくありませんでした。