静岡県下田市縄地鉱山~河津町菖蒲沢海岸

訪問日 2010.3.18
採集鉱物 自然金、銀黒(針銀鉱などの硫化鉱物の集まり)、水晶


ようやく大学受験も終わり、鉱物採集に出かけられるようになりました。今回は1泊2日で南伊豆の産地を巡りました。中学、高校と6年間、同じ生物部の部員だった2人と一緒です。旅の最中、僕らが今までにしてきたこと、共に学び、共に進み、そして時にぶつかり合い、励ましあい、そんな数々のことを思い出し、語り合いながら、これからの友情の絆を確かめ合い・・・・・・
・・・・・・ってなことは全くもってありませんでしたw そりゃ、あたりまえですね。あったことといえば、山道を歩き、いつの間にか道なき道を行き、深くて暗い縦坑を見て身を震わせ、危ない沢下りをし、伊豆急の電車賃の高さに驚き・・・ まぁ、以下詳しく見ていきましょう!

まず初めに向かった産地は縄地鉱山です。ここでの目当ては銀黒鉱石です。
私たちは東京から伊豆急下田まで電車で行き、駅前より出ている東海バスで「板戸一色」バス停まで行きました。そこから国道135号線を100mほど南に戻り、右側(海と反対側)の坂道を登っていきました。ここからは舗装された一本道のウォーキングです。途中、海の見える見晴らしの良いところも多々あり気持ちの良いものです。
30分ほど進むと下田市と河津町の境界辺りで、道は少し長めの東西方向の直線部分の後、半円状にカーブします。そのカーブを抜けたあたりに右側の森の中に沢が見えますのでそこに降りていきます。沢の岩石はほとんどが熱水変質を受けた安山岩で面白いものではありませんが、よく探せば石英の塊も見つかります。しかし、硫化鉱物の黒い脈がついた銀黒は中々見つかりません。その代わり、安山岩の中に幅~5,6センチ位の石英脈があり、そこには細かいながらも形のきれいな水晶がたくさんあります。

縄地鉱山の石英脈
↑安山岩中の水晶脈 このような石はたくさんある。もっと細かい水晶はよりたくさんある。

細かい水晶などは今回の目的ではありません。私たちは沢を下っていきました。少し行くと、ミカンの果樹園の中になってしまいました。最近では「果物泥棒」なる悪者も多いので、農家の方に勘違いされないように早めにそこから抜け出しました。まさに「李下に冠を正さず」です。どうせ大して石もありません。沢の下方を見て右側に上がっていくと道があります。道に上がる途中の斜面にも細かい水晶はたくさんありました。

道を少し下方へ進むと右側斜面に入っていく脇道がありましたので、そこを上っていきました。有刺鉄線の柵で誘導された道です。この道を少し行ったところには、銀黒のありそうな緻密な石英塊が結構ありましたが、やはり銀黒はほとんど少ししかありません。道なりに進んでいくと、途中石英塊や細かい水晶に多々出会いますが、それよりも目を驚かせるのはクレバスのような縦坑です。地層の層理に沿って掘られているため、クレバスのような横長な形の坑口になっています。中は濃い闇が充満しています。「立ち入り禁止」の看板と有刺鉄線による柵がありますが、誰もこんな中に入ろうなんて思わないはずです。試しに小石を投げ込んでみましたが、カランコロンカランコロンカランコロン・・・・・・と落ちていき、かなり深さがあるようでした。私たちは身をすくませて先に進みました。その後も縦坑や普通の坑口が幾つかありました。繰り返しになりますが、中にいい石があるような気配は無いので、ゼッタイに入らないで下さいね(私ならあんな所、入れといわれても入りたくないです。いえ、3センチ以上の自然金の結晶が確実に取れると言うなら別ですがw そんなことはありえないのでネ(^皿^;)) 
縄地鉱山の銀黒
↑採集した銀黒 これで全部です。。。


縄地鉱山の坑口
↑坑道の様子 これは縦坑ではなく横穴のもの。かなり奥深くまで続いています。左に写っているのは同行者の1人のmatomatoさん(仮名w)


しばらく、有刺鉄線つきの一本道を進むと、沢にぶつかり道はなくなります。今度は沢くだりです。この沢くだりがキツイ事キツイ事、受験上がりのなまった身体には応えました。。。 途中難関ポイントもありましたが、なんとか沢くだりを終えると国道135号線に出ます。ここまで、はじめの沢に下りたところから、だいぶ体力を使ってしまいました。それにもかかわらず、収穫は銀黒入りの石英塊たった3つでした。(後に、K標本店の社長に聞いたところ、この銀黒はまずまずの品位だと言ってもらえ、少し救われた気分ですw)
なお、縄地鉱山は3月でも草が芽吹き始めていました。4月~10月くらいでは、下草が生い茂り、木々の葉が日光をさえぎり、沢の水量は増し、蚊などの虫が発生し・・・と、鉱物採集は困難になると思います。


そこから国道135号線に沿って今度は菖蒲沢海岸を目指します。この国道はもともと有料道路であって、歩道は大変狭く、歩行には向きません。かといってバスも無いので私たちは仕方なく歩きにくい道を歩きました。沢から国道に出て少しのところに山側の斜面のコンクリートにぽっかりと横穴が開いてました。これもおそらく坑道だったのでしょう。しばらく国道を進みましたが、途中の縄地トンネルは歩道が完全になくなるので、その上の山を超える必要がありました。少しきつい斜面ですが、先ほどの沢くだりに比べれば何のこともないようでした。縄地トンネル以降も2つトンネルがありますが、こちらは歩道が多少あり、距離も短いので通り抜けられます。


国道歩きも無事に終え、なんとか菖蒲沢海岸につきました。この産地は有名ですので、詳細情報は様々な書籍、HPなどに載っていますから、ここでは書きません。
この産地では、海岸の石英礫の中に銀黒部分があり、さらにそこに自然金が見つかるというものです。有名産地ですので、私の知り合いも過去にたくさん訪れており、彼らがここで採集して来た石を見たことは何度もありました。しかし今回、縄地鉱山を歩いてきた後にこの海岸で石英を見ると、まさしく縄地から流れ着いた石なのだなぁ・・・としみじみ感じました。細かい水晶の感じがとてもよく似ています。(ここ菖蒲沢海岸でも水晶は採れます。)
さて、一息ついてウォーキングの疲れを少し取ると、銀黒探しを始めました。現地で2番目に見つけた銀黒を見て驚きました。「自然金だ!
その石がこれ↓です。

菖蒲沢の自然金を含む石英レキ


菖蒲沢の自然金
↑上の石のアップ写真。幾つかある金色の部分が自然金。右下の1番大きいもので直径0.6mmほど。

その後も、ルーペで簡単に確認できる自然金が5つほど見つかりました。最大のもので、1mmくらいです。ここは有名産地だからもうあまり良い石は無いかと悲観的な予想をしていただけに、私は大変興奮して前半の縄地鉱山での疲れも半減してしまいましたd(^∀^)


菖蒲沢の自然金
↑赤いビニールテープで付けた目印の先に細かい自然金がついている。

菖蒲沢の自然金
↑家でルーペで確認して見つけた自然金。赤いテープの先にある2つの金色の部分が自然金。大きいほうで長径1mm


この産地が金を見つけやすいのは、銀黒が海岸の転石となっているからです。通常、山の中で銀黒を見つけた場合、泥をかぶっていたり、角がとがっていたりと観察がしにくいですが、ここの石は丸っこく、波にもまれているため藻が生していたりもせず、新鮮な部分が簡単に観察できます。また、黄鉄鉱や黄銅鉱などの金色の鉱物は自然金と見間違える最大の要因ですが、ここでは波にもまれる中でこのような硫化鉱物は錆びて抜け落ちてしまうため、石の表面には錆びない金だけが残ります。この産地で石を割って探すのは得策ではありません。石の表面を探していくだけで十分見つかるはずです。特に、銀黒の黒い脈が多い部分にはほぼ確実に何かしらの形で金が見れると思っていいです。時間が少なければ、産地で銀黒を集めて家でじっくり一つ一つ見ていくのも手です。
銀黒の中から金を探すときは石をハンマーで割るべきではありません。それよりも、ダイヤモンドカッターで石を切ったほうが見つかります。これは、金は展性、延性が大きいため、カッターで切ると金の部分が細い糸状に伸びて小さなものでも大きく見えるようになり発見しやすくなるためです。このことは、K標本店の社長から教えてもらったばかりで、自分ではまだ実践していません。大学でそのような機器を使えるチャンスがあればやって見たいと思います。そのために、縄地鉱山の銀黒も菖蒲沢の転石もしばらく保管しておくつもりです。


菖蒲沢海岸での採集を満喫した後、私たちは菖蒲沢バス停よりバスで河津駅に向かいました。通常は歩けない距離ではないのですが、この日はもう足が疲れきっていました・・・ ここのバスの本数は大変少ないのでよく確認してくださいね。そして河津駅から伊豆急下田まで電車に乗り、下田で一泊しました。

次の日は、菖蒲沢海岸の隣の「やんだ」で沸石採集でした。こちらもどうぞ。