珪灰石は白色の柱状、長板状、粒状、針状、繊維状などの形で生じ、ガラス光沢を示す。珪灰石の硬度は4.5-5、比重は2.90で、{100}に完全、{001}{102}に良好なへき開を示す。
珪灰石はイノ珪酸塩鉱物に分類され、輝石に準ずる構造を持つので”準輝石”と呼ばれる。輝石の化学組成を考える上で、珪灰石は仮想的なカルシウム端成分として扱われる。
珪灰石の組成は単純化するとCaSiO3であるが、結晶構造を考慮するとCa3[Si3O9]と表される。珪灰石の酸化カルシウムCaOと二酸化ケイ素SiO2が1:1のモル比で結合した組成であり、重量比で表すと酸化カルシウム(CaO)が51.75%、二酸化ケイ素(SiO2)が48.25%である。
珪灰石はあまり不純物を含まないで産することが多い。珪灰石のCaの一部をマンガンMnに置換したものはバスタム石、鉄Feに置換したものは鉄バスタム石であるが、これらとの間に連続的な固溶はしない。
以下に珪灰石グループの鉱物の一覧を示す。
珪灰石は代表的なスカルン鉱物である。炭酸カルシウムからなる方解石がシリカと反応すると珪灰石が生じる。
反応式で表すと、
3CaCO3 + 3SiO2 → Ca3[Si3O9] + 3CO2
あるいは単純化して、
CaCO3 + SiO2 → CaSiO3 + CO2
となる。
珪灰石は花崗岩などの深成岩の貫入によって起きる接触変成作用によるスカルンに含まれる他、広域変成岩中に含まれる炭酸塩岩の変成・変質によっても生じる。
珪灰石と共存する鉱物は、方解石、灰礬柘榴石、灰鉄柘榴石、透輝石、ヴェスヴ石、モンチセリカンラン石、ゲーレン石、金雲母、石英、黄鉄鉱、黄銅鉱などが挙げられる。
珪灰石の溶解温度は1540℃と高温であるため耐火材料として用いられる他、セラミックス、プラスチックや塗料、接着剤、樹脂などの添加材に使用されている。 珪灰石は健康に害を与えないため、特に耐火材料としては石綿の代替材料として重要である。 セラミックスにワラストナイト(珪灰石)を添加すると、体積収縮が減少し裂傷を防ぐ効果がある。 塗料や接着剤に珪灰石を添加すると、耐久性が高まり劣化が緩和される。 プラスチックに珪灰石を添加することで、張力および曲げ強さ等の強度、剛性が向上する。
珪灰石を含むスカルンを採掘、粉砕の後に分級などによって精製して用いる。珪灰石の産業的利用のための鉱山は、現在は主に中国、アメリカ、カナダ、メキシコなどで採掘されている。