東京都神津島の大隅石

訪問日 2007.7.28

採集鉱物・岩石  大隅石(苦土大隅石)、高温石英流紋岩、黒曜石

神津島の大隅石の産地は国立科学博物館の松原 聰先生の『鉱物ウォーキングガイド』にも載っていますが、東京都であるとはいえ離島であり、 日帰りはほぼ不可能な産地ですので、訪れた人はあまりいないようで、ネットにはほとんど情報が載っていませんでした。 私も、今回神津島へ行ったのは、生物部の合宿のためであり、「まあ1ミリくらいの大隅石が2,3個ついている石が見つかればいいかな、、、。」って程度の期待で行きました。

しかしっ!実際に行ってみると、私の想定をはるかに上回る品が採れたのです!


↑大隅石のアップ 下にある丸い銀色のものは百円玉 黒い六角形のが大隅石(赤い三角のついている以外のものも全部大隅石です) この塊だけでも1ミリ前後の結晶が50個近くついている

どうやら、流紋岩の流理に沿ってある隙間に結晶が成長しているようです。大隅石というと鹿児島や岐阜の青い結晶を思い浮かべますが、(写真ではわかりませんが)ここのものはほとんど黒に近い紺や濃緑色の結晶である。


大隅石の採れるのは、島の北部の赤崎付近の流紋岩です。島の中心部から赤崎までは村営バスが走っており、それを利用します。歩こうと思えば春や秋なら無理な距離ではないですが、真夏の日差しのもと歩いたら、産地に着く前にへばりそうです・・・ でも、村の中心部から赤崎までの海岸は青い海と白い流紋岩の流理構造のある大きなレキが独特の美しい景色を作り出していて、とてもすばらしいものです。
さて、バスは赤崎トンネルの南側の赤碕遊歩道で終点です。ここは遊歩道に直接つながっていますが、岩石はほとんどがクリストバル石の球顆入り黒曜岩ですし、海水浴の客がたくさんいて採集どころじゃありません。
赤崎トンネルを抜けてさらに北側へ行きます。トンネルを抜けると左側の海岸に遊歩道の一部の残骸があります。台風で破壊されたのでしょう。さらに進むと左の海側に小高い流紋岩の露頭があり(下の写真)その少し先に海岸に降りられる階段があります。ここから海岸に降ります。私が行ったのは7月28日でしたが、赤崎の遊歩道には海水浴客がある程度いたのですが、ここまでくると本当に私達以外まったく人はいませんでした。ここの流紋岩のレキを割って大隅石を探します。クリストバル石の球顆もここで採集できます。景色もいいので夏は水着を持って海水浴も楽しめますが、砂浜ではなく岩場なのでサンダルがないと足が切れてしまいます。なお、ここはトコブシの漁場となっていて貝類は採集禁止となっています。
今回私が採集した大隅石は両手で抱えられる程度の塊1つの中から出たものです。その塊1つからこれだけたくさんの結晶が出たということは、まだたくさんの大隅石がこの海岸に眠っていると思います。
また、私たちはここまでしか行ってないのですが、赤碕トンネルの先にもうひとつトンネルがあり、その先の海岸(返浜という)でも何か見つかるかもしれません。余裕のある方はチャレンジしてみてください。


↑海岸の流紋岩の露頭。見事な流理構造が見える。


↑クリストバル石の球顆。このようなクリストバル石入りの黒曜岩は神津島にはいくらでもある・・・


↑海岸の様子 巨大な流紋岩のレキがごろごろしている。白い流紋岩が青い海に映えて美しく、サンゴの砂浜とは違う独特の魅力がある。

島の中のほかの産地について・・・

多幸湾は釜が下まで行けると松原先生の本に書いてありますが、地元の方に「落石で危ない」といって止められました・・・ 景色がよく砂浜もあるので海水浴には向きます。桟橋のところから釣りもできます。(釣りをしてたら、なんと体長3メートルもあるのエイが水中にいるのを見ました! 水も透き通っていてとても綺麗です。私はハコフグ2匹しか釣れませんでしたが・・・) ともかく結論としては石器になるような黒曜石を採るのはムリです。でもせっかく神津島まで来たのなら観光として行ってみる価値は十分にあります。

天上山は流紋岩以外何もありませんが、景色がよく島のシンボルでもありますからここも行きましょう。登山は大してきつくありません。せいぜい筑波山程度です。私たちは霧の中登山しましたが・・・ 幻想的で面白かったです。

あと、神津島港のところにも、球顆入り黒曜岩の露頭があります。ハンマーなしでも崩れた小石をカンタンに拾えます。


↑多幸湾の崩れてるところ。 なんか日本離れしてるような美しい景色です。
ここを通らないと黒曜石は採れないのですが、危険なので絶対行ってはダメだと地元の方に言われました。。。現在進行形で崩落してるそうです。


↑多幸湾 上の写真の右につながります。 向こうの崖の黒く見えるところが黒曜石の層ですが・・・ ほとんどは斜長石などの斑晶を含んだ低品質なもののようです。中には石器になるようなキレイなのもありますが・・・


↑天上山の登山口 うっそうと茂った森を楽しめます。


↑山頂付近  途中から森はなくなりハイマツ地になります。霧の中の登山も楽しいです。景色は見えないけど、幻想的です。
晴れてれば景色は無茶苦茶いいんでしょうけど、夏は暑すぎてやばいと思います。気をつけて ^^;


↑登山途中にある池 山の上のほうまで湧き水があるようです。
普通の人は気付かないでしょうけど、このモコモコした緑色のマットはスギゴケというコケ植物です。たぶんこの種類の中では最大級で、ここの池では高さが20センチ以上になってました。天然の苔庭です。


↑スギゴケのアップ写真

 なんか鉱物とは関係なくなってしまいましたが、神津島は観光で行くにもとてもすばらしいところです。ぜひとも今度の夏休みは神津島へ!

~追記~

2010年8月、神津島を再訪しました。
やっぱり神津島はいい島です! また何度も行きたくなってしまいますねー

さて、赤崎にもまた大隅石を探しに行ったのですが、落ち着いて探せば、あるはあるは、 それはもう無限にと言っていいくらいたくさんの大隅石がありました! 流紋岩の転石から探し出すのですが、神津島の流紋岩は噴火の年代によって少しずつ雰囲気が違います。カミントン閃石流紋岩とよばれるタイプの流紋岩に大隅石は含まれているので、その母岩の雰囲気をつかめばラクラクと見つけることができます。


↑大隅石を含む流紋岩の巨大な塊! 
 この岩についていた物は結晶が細かいので採集せず、周りにあった転石から結晶の比較的大きなものを選んで採集しました。それでもこの産地では結晶の大きさは1mm程度が限界のようです。
 

↓赤崎の海岸の様子 相変わらずきれいな海でした!


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