島根県益田市都茂鉱山の鉱物採集

訪問日 2012年8月11日

浜田付近で三郡変成帯とアルカリ火成岩(黄長石霞石玄武岩)を観察した後、さらに西側の益田市にて都茂鉱山を訪れた。出雲を出発して日帰りでアレコレ見て回ったので、あまり長いは出来ず短時間の観察・採集となったが、とりあえず現地の様子を見学できたので良しとしよう。

◯概略

都茂鉱山は、約80Ma(白亜紀後期)に活動した石英閃緑岩質マグマから発生した熱水が、176〜174Ma(ジュラ紀)の付加体中の石灰岩などと反応して生成されたスカルン鉱床である。丸山・都茂・宝来・旭・銀山などの鉱床群があり、この内最大の丸山鉱床は水平方向に延長350m、傾斜方向に400m、厚さは30mに達し、立坑の合計の深さは350mを超えた。銅を主体として、副産物としてタングステン、金、銀なども採掘された。 平安時代836年には丸山鉱床の採掘が始まっていたことが史料から明らかになっている。
江戸時代には、天領として大森(石見銀山)に置かれた代官所の支配下にあり、1842年からは浜田藩が支配。
明治時代以降は休山と開発が繰り返される。大正時代の一時期には精錬所も設けられた。
戦時中は国の支援により銅鉱石の採掘と処理量30t/dayに及ぶ浮遊選鉱が行われた。戦後、中外鉱業の経営となり、1959年丸山鉱床にて優良鉱床が発見され、1970年前後に最盛期600t/dayの稼働を向かえる。
60〜70年代の学術雑誌『鉱山地質』などには都茂鉱山の地質や鉱物の記載、成因などに関する論文が数多く残されている。 また、島崎英彦・小澤徹によってBiTe(テルル化ビスマス、ビスマステルライドBismuth Telluride)という組成をもつ都茂鉱Tsumoiteという新鉱物も発見されている(American Mineralogist, 63, 1162-1165, (1978))。
選鉱所では蓄電池機関車で運搬された鉱石(銅品位1.1%)を12mm以下に破砕し、さらに磨鉱により粉状にした上で浮遊選鉱を行う。その後、脱水処理の工程を経て銅品位22%の精鉱を作り精錬所へ送っていた。
その後の時代は、生産コストの増大と国際競争力の低下が原因で1987年6月に閉山。現在まで中外鉱業による鉱山跡の管理が続いている。
現在、丸山坑の前にはそこそこ広いズリ捨場と若干の鉱山施設跡が残され、山陰のスカルン鉱物採集の産地として有名である。また最近では島根ジオパークの一環として地球科学や地域文化の教育活動等にも貢献している場所である。

◯主な産出鉱物

・金属鉱石鉱物

黄銅鉱Chalcopyrite、磁硫鉄鉱Pyrrohtite、硫砒鉄鉱Arsenopyrite、黄鉄鉱Pyrite、磁鉄鉱Magnetite、赤鉄鉱Hematite、閃亜鉛鉱Sphalerite、 方鉛鉱Galena、硫カドミウム鉱、自然金Gold、輝水鉛鉱Molybdenite、錫石Cassiterite、鉄重石Ferberite、鉄マンガン重石Wolframite、 輝蒼鉛鉱Bismuthinite、自然蒼鉛Bismuth、硫テルル蒼鉛鉱Tetradymite、コサラ鉱Cosalite、都茂鉱Tsumoite、ハウチェコルン鉱hauchecornite

・スカルン鉱物

珪灰石Wollastonite、鉄バスタム石Ferrobustamite、バラ輝石Rhodonite、灰鉄輝石Hedenbergite、透輝石Diopside、緑簾石Epidote、透閃石Toremolite、灰ばん柘榴石Grossular、灰鉄柘榴石Andradite、ベスブ石Vessubianite、コンドロ石Chondrodite、ヒューム石Humite、ダンブリ石Danburite、斧石Axinite、珪灰鉄鉱Ilvaite、マラヤ石Malayaite、

・その他脈石

石英Quartz、方解石Calcite、魚眼石Appophylite、蛍石Flourite、ルチルRutile、灰十字沸石Phillipsite、菱沸石Chabazite

◯都茂鉱山の鉱物産地情報

都茂鉱山丸山坑のおおよその位置は、島根ジオパークのサイトで紹介されていますので、こちらを御覧ください。

◯フィールドの様子

・選鉱所跡付近

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↑選鉱所や鉱員宿舎が会ったとされる場所の付近。
写真1:中外鉱業株式会社の看板が立っている。更に上流へ向けて、「都茂鉱山丸山坑」の看板が立っている。
写真2:左の写真の地点のやや上流に建っていた看板。

・丸山坑前のズリその1

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↑左:選鉱所跡から上流へ車を走らせると左手の川の対岸にコンクリートの出鉱施設の跡のようなものが見られる。その付近で道路脇に広場があるので駐車する。
右:駐車したところから対岸方向を見ると、藪の中にコンクリート製の頑丈な橋が隠れているのがわかる(写真では藪に覆われてわかりづらいが少し写ってます)。これをわたって対岸に行くと、そこにはズリが広がっている。

島根県益田市都茂鉱山の鉱物採集_鉱物産地情報_ジオパークジオサイト
↑ズリとコンクリート製の施設跡。
ズリ石は駐車場の敷石のような細かなものが多い。鉱物としては、ただの堆積岩のような岩石のほか、石英脈石質のものやスカルン鉱物からなる塊も多いが金属鉱石鉱物の気配はあまりない。

島根県益田市都茂鉱山の鉱物採集_鉱物産地情報_ジオパークジオサイト
↑それでも一応鉄さびに覆われた石があり、鉱山のズリである様子がすぐに確認できる。

以下に、このズリで見られたスカルン鉱物の集合体の岩石を幾つか示す。
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↑上段2つと下段左側の石はスカルン鉱物の塊で柘榴石類や灰鉄輝石Hedenbergite、方解石Calcite、石英Quartzなどからなる。
上段右側の石は粒上の柘榴石の結晶が見て取れる。
下段右側の石は石英と方解石を主体とする塊に若干の黄鉄鉱Pyriteがついている他、やや赤みを帯びているのはヒューム石属Humite groupの鉱物かもしれない。

島根県益田市都茂鉱山の鉱物採集_鉱物産地情報_スカルン鉱物
↑こちらは砂泥質の堆積岩が変成を受けたと考えられる岩石。白い部分は石英。

・丸山坑前のズリその2

駐車した場所からほんの少し上流側に行くと、左下の写真に示すような砂利道がある。錆びついたベルトコンベアがあるのが目印である。
これを歩いて入ると、ベルトコンベアの下あたりで左手にズリの盛られた場所があるので、ここからズリに入ることができる。
このズリの奥に丸山坑の坑道跡がある。

島根県益田市都茂鉱山の鉱物採集_鉱物産地情報_ジオパークジオサイト 島根県益田市都茂鉱山の鉱物採集_鉱物産地情報_ジオパークジオサイト
↑左:砂利道の入口付近の様子。
右:ベルトコンベアの下から盛られたズリを見る。

島根県益田市都茂鉱山の鉱物採集_鉱物産地情報_ジオパークジオサイト 島根県益田市都茂鉱山の鉱物採集_鉱物産地情報_ジオパークジオサイト_丸山坑
↑左:ズリの様子。かなり広大であるが、こちらも石は細かいものが多い。また、夏になると下草が茂ってしまう場所もあり採集しにくいという面もある。
右:丸山坑の様子。黄色いプレートが取り付けられており、まだあまり錆びていないことから他の鉱山などと比べて比較的息が長かった鉱山であることを伺わされる。

島根県益田市都茂鉱山の鉱物採集_鉱物産地情報_輝水鉛鉱 島根県益田市都茂鉱山の鉱物採集_鉱物産地情報_黄鉄鉱磁硫鉄鉱
↑採集できた鉱物。
左:石英Quartzに付いた輝水鉛鉱Molybdenite
右:これも同じく石英に付いた黄鉄鉱Pyriteと磁硫鉄鉱Pyrrhotite

採集できた鉱物標本はいずれも小さなもので、採集の成果としては大したことないとしか言えないだろう。しかし、短時間しか現地にいられなかった中である程度のものを見ることができたので満足である上に、ズリはかなり広大であるため、春や秋など、下草のあまり茂っていない時期に丹念に探せばまだまだ珍しい鉱物が見つかりそうな雰囲気はあり、良い採集成果が期待できそうな場所であると思う。

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