アメリカ合衆国カリフォルニア州
Dumont Dunes(デュモン砂丘)近くの原生代全球凍結堆積物
訪問日 2012.3.4.
地球惑星科学科の地惑巡検で訪問しました。カリフォルニアCalifornia州のデスバレーDeath Valley国立公園のすぐ近くにある、Dumont Dunesデュモン砂丘はアクティビティ観光に用いられていますが、その近くにProteozoic原生代の堆積層が露出しており、今回はそれを見学しました。
今回訪れたDumont Dunesの位置。
北東方向にラスベガスがあり、クルマで約1.5~2時間程度かかりました。
Death ValleyはBasin and Range Province(地溝・地塁地帯)の中心部あたりに位置し、拡大に伴う正断層型の活動などにより地殻下部のPreCambrian先カンブリア時代の地層が数多く露出しており、今回行った場所もそのひとつです。
今回の主な観察対象は約6億年前の全球凍結の終了時に積もった堆積層です。
全球凍結により、海洋の沖合まで巨大なレキが氷河により運ばれてできるDiamictiteダイアミクタイト(粒径の全く異なる砕屑物が混在する淘汰の悪い礫岩)と、全球凍結終了をもたらした大気中の異常な濃度の二酸化炭素が海洋に溶解し、アルカリ土類やアルカリ金属のイオンと反応してできた苦灰岩からなる炭酸塩岩層(Cap Carbonateキャップカーボネート)の2つの組合せが見ることができます。
その他にも、最近のBasin and Rangeの拡大活動に伴う玄武岩質の火山活動によってできた火山地形や、第四紀の砂丘堆積物の様子なども見ることが出来ました。
詳細な航空写真。
Startの地点にバスを止め、そこから歩きました。およそ2時間程度の巡検です。
地点A~Hは後述の解説に対応します。
・Start地点
(1)A地点
(2)B地点
(3)C地点
(4)D地点
(5)E地点
(6)F地点
(7)G地点
(8)H地点
・まとめ
・Start地点
↑Start地点でバスの前で集合写真。
砂漠である!初の本格的な砂漠での活動!
↑Start地点の様子。本当に何もない…
↑この小道に沿ってStart地点から進んでいく。
(1)A地点
A地点では、玄武岩質の岩石の露頭がいくつか見られた。航空写真でも黄色い砂の中に黒い影がおよそ3つ見えているが、それが露頭である。3つそれぞれの露頭について、その様子を記す。
↑A地点の最も南の露頭とその石の様子。
↑A地点の次の露頭とその石の様子。
やや変成を受けて片状の組織ができている?
↑A地点最も北の露頭。発泡した玄武岩(~安山岩?)からなる。
↑北側から振り返ってA地点の露頭を望む。左側がO先生、右側が私です。
↑A地点を離れて北側へ進む。U先生&O先生。
(2)B地点
今回のルートは航空写真でも見ると分かる通り、小川に沿った道であった。この小川は水が流れているものの激しく乾燥した気候の影響で多量の塩分を溶かし込んでいると考えられ、川の周りには白い泥上の塩が吹いていた。
(3)C地点
C地点というわけではなく、Bと書いた辺りからCと書いた辺りの東側の崖についてです。下側に玄武岩質の岩石が露出しており、その上約4mほどのところに第4紀層が水平に乗っかっています。玄武岩はやや風化が進んでいるようでした。
↑上が第4紀層、下が玄武岩質のやや風化した岩石。手前を(2)で触れた川が流れている。上の第4紀層が崩れ落ちてきている。
(4)D地点
ようやく原生代の堆積層に!↑D地点、原生代堆積層の露頭に群がる学科の人々。
この層は走向がN66度W、傾斜は34度Nで、ほぼ真北に約30度ほど傾いている。
岩石は主に酸化鉄の赤茶色をした粘板岩からなる。続成作用がやや強かったためか、黒色やや金属光沢を持った針鉄鉱Goethiteか赤鉄鉱Hematiteが皮膜状に層間などに入っていることもあった。また、地上での風化作用の結果か、方解石Calciteの幅数ミリの脈や皮膜などが多数見られ、一部空隙の大きくなっている部分では数ミリの白色自形結晶も見られた。
↑D地点のすぐ目の前にダイアミクタイト層を発見!
「もうこれでいいんじゃね?」という空気もあったが、まだこれだけでは全球凍結の説得力が足りない…
ダイアミクタイトというには、
↑露頭によじ登って景色を楽しむみんな。
↑上の写真と同じ露頭のアップ。
このくらいだと、普通の礫岩かもしれないと思っていた。
ダイアミクタイトにしては、やや淘汰が働いているようで、若干、級化成層している様子もあったので、これだけではまだ全球凍結による氷河性堆積物であると確信は持てなかった。
もっと氷河による運搬作用を受けた巨大なレキ(drop Stoneドロップストーン)とキャップカーボネートが見つかる必要がある。
(5)E地点
このあたりになると、やや大きなレキがゴロゴロと入ってくるようになる。巨大なレキがあり、氷河性であるとだんだん確信が高まる!
ドロップストーン!?
↑見た中では最も大きかったレキ。
2人で持ち上げているような素振りをしているが、ちゃんと露頭にくっついている。さすがにこのサイズは持ち上がらない(笑)
レキ部分だけが風化侵食に耐えて、露頭から突き出ていた。
(6)F地点
この辺りになると、そこかしこに大小さまざまなレキが入っていて、粘板岩よりもダイアミクタイトが優勢になる。
↑露頭の様子。
赤茶色の粘板岩に、灰色かかったレキが入っているのが分かる
↑灰色のレキは主に苦灰岩で最も多かった。表面は特徴的な象牙状風化を示す。
その他、安山岩のような火山岩やクォーツァイトなどさまざまな岩種のレキが入っていた。
(7)G地点
ここで一風変わって、最近、おそらく第4紀、の玄武岩質火山が現れる。
↑F地点の露頭の前から北へ振り返ると、昭和新山のような溶岩ドーム?スコリア丘?が見られる。
↑ほとんどガラス質の、急冷された黒色の玄武岩からなる。
ここだけハワイのようである… 周りの岩石に熱変成や熱水変質などの影響を与えた様子はなかったので、ここだけピンポイントにマグマが上昇・噴出したということだろうか、プレカンブリアンの堆積層が残っている中に突如現れた第4紀の玄武岩、日本の常識からすると実に不思議な光景であった。
昭和新山のような単成火山か、あるいはスコリア丘かもしれない。
↑岩石の様子。よく発砲しているガラス質で、まさに溶岩である。
(8)H地点
↑玄武岩火山の南東側を通って裏側へ行き、そこから振り返って撮影。
要するに、この写真の左側が玄武岩、右側が原生代の赤茶色ダイアミクタイト層。
↑そして同じ場所から西を向くと、そこにはドデーンと Cap Carbonateキャップカーボネートの露頭が!
↑露頭の様子。見渡す限りずっと上までDolostone苦灰岩である。
位置は北側に傾斜した先ほどまでの赤茶色ダイアミクタイト層よりも北にあるので上位であることは分かる。
ダイアミクタイトの層は、D地点でレキが少し級化成層していたので、北側のほうが上位だと考えられる。
↑苦灰岩のアップ。表面は象皮状風化構造を示している。
↑帰りはダイアミクタイトの裏側を通って帰りました。
南に向かって歩く先生2人、左側の露頭がD~F地点の裏側にあたります。北に傾いているのがよくみえます。
・まとめ
歩いた場所の鳥瞰図(Google Earthより)と、それぞれで主に見られた地層や岩石のまとめ。
ほぼ真北に30度ほど傾いたDiamictiteダイアミクタイトの地層とその上位にある炭酸塩岩(Capcarbonateキャップカーボネート)が600 Maの全球凍結を示しています。
さらに最近のBasin and Rangeの拡大活動の産物として玄武岩質の火山岩などが見られ、第4紀堆積物として砂丘堆積物や塩などの化学堆積物が見られました。